2018年9月24日(月)

無人暗殺機ドローンの誕生 リチャード・ウィッテル著 開発・実戦投入への曲折を活写

2015/4/22付
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 科学技術の急速な進歩に伴い、近年、戦闘の手段や方法は劇的な変化を遂げている。なかでも、著しい進化を見せる軍事技術として、サイバー技術、宇宙空間技術、ナノ技術とともに無人化技術が挙げられる。

(赤根洋子訳、文芸春秋・2000円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(赤根洋子訳、文芸春秋・2000円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

 2001年の9.11テロ事件以降、米国の対テロ戦争では、遠隔操作の無人戦闘機が、民間人の巻き添えを極力回避しつつ、テロリストを標的殺害する精密兵器として重視されてきた。その一方で、13年の国連人権理事会に提出された無人機攻撃の調査報告によれば、パキスタンでは04年以降330回の攻撃で少なくとも2200人が死亡、そのうち、少なくとも400人の文民が殺害された。

 はたして、無人機攻撃はテロの撲滅に有益なのか、それともノーベル平和賞受賞者マララさんの言うように、テロを助長し有害なのか。さらに無人機の未来はどうなるのか。それに答えるには、無人機とは何か、どのように改良され、使われてきたかを、歴史的経緯から考察することが必要である。米空軍の武装無人機プレデターの誕生秘話をつづった歴史物語である本書は、その意味で最適の書だ。

 無人標的機から無人偵察機、さらには、レーザー誘導ミサイル搭載の無人暗殺機へと変貌する過程が、それぞれの契機となる事件や武力紛争と絡めて詳述される。特に、米国は00年9月にウサマ・ビンラディンを発見するも、当時、武装プレデターを保有しておらず、翌月の駆逐艦爆破事件や翌年の9.11事件を未然に防げなかったことが痛恨の極みとなった。その後の展開からみても、著者が指摘するように、必要は発明の母にして戦争は必要の母であったのだ。

 もっとも、兵器開発や実戦投入の経過は順調だったとはいえず、法的・政治的・技術的な難問は軍とCIAの複雑な交渉を経て克服されてきたことが活写される。なかでも、無人機攻撃が暗殺禁止の米大統領行政命令に違反するかどうかという議論や、民間人の巻き添え被害を回避する関係者の努力に関する言及は法的観点からも興味深い。

 ニッチ・テクノロジーだった無人機は、今や無人機革命として民間利用を含む大きな社会変革を引き起こす中核となっている。と同時に、有益か有害かという疑問を含め、無人機が引き起こす様々な問題に対処する方策も見いださなければならない。無人化技術は今後とも進化し続けるだろう。無人機革命の起源を記す本書は、無人化技術の今後を考える上でも格好の材料となりそうだ。

(京都産業大学教授 岩本 誠吾)

[日本経済新聞朝刊2015年4月19日付]

無人暗殺機 ドローンの誕生

著者:リチャード ウィッテル
出版:文藝春秋
価格:2,160円(税込み)

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