2019年1月21日(月)

自主・自律あっての大学だ

2015/4/14付
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大学は社会のなかの聖域ではない。いわゆる「大学の自治」に制約があるのも確かだ。それを前提に考えても、政府のこの方針は穏当ではあるまい。国立大に対し、入学式や卒業式での国旗掲揚、国歌斉唱を求める動きだ。

安倍晋三首相は9日の参院予算委で、国立大の入学式などでの国旗・国歌の扱いについて「税金によって賄われていることに鑑みれば、教育基本法の方針にのっとって正しく実施されるべきではないか」と述べた。これを受けて、下村博文文部科学相は翌日の記者会見で「国立大の学長が参加する会議で要請することを検討している」と具体策に踏み込んだ。

掲揚・斉唱は小中高校では当たり前だから、大学でも当然だという声は少なくないだろう。

しかし学習指導要領に定めがある初等中等教育と、大学とは根本的に違う。大学はその運営も教育・研究の中身も自主性、自律性が尊重されるべき存在だ。世界中から人を受け入れる空間でもある。大学のグローバル化が急務となるなかで、国公立、私立にかかわらず画一的な統制はなじまない。

2006年の教育基本法改正では、大学の自主・自律の尊重について新たに条文が追加された。首相が「基本法にのっとって」と述べたのは、同法の「わが国と郷土を愛する」のくだりを指しているようだが、大学についての条文にも目配りがほしいものだ。

下村文科相は、各大学への要請は「強制ではなく、お願い」だという。しかしまさに首相が「税金によって賄われている」と述べたように、国立大への交付金のさじ加減は文科省が握っている。そこからきた「お願い」は大学を萎縮させる効果が十分にあろう。

大学に対する政府の役割は、入学式をどう営むかといったお節介でなく、教育・研究の水準向上や多様性確保である。政府はこの問題で、これ以上の口出しは控えるべきだ。国立大学協会など大学サイドでも、きちんと対応を議論すべきではないだろうか。

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