春秋

2015/4/13付
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撞木(しゅもく)といえば、叩(たた)き鉦(がね)を鳴らすためのT字型の仏具のことだ。この名前を冠した魚がシュモクザメである。英語ではよりわかりやすく、ハンマーヘッドシャークという。左右に張り出した頭の両端に目がついている。一度見たら忘れられない、存在感抜群のスタイルだ。

▼このサメが思わぬ形で注目されている。東京の葛西臨海水族園で、160匹ほどいたマグロやカツオが昨年末から次々と死に、ついに1匹になった。調べたが原因はよくわからない。そこで2匹のシュモクザメと、タカサゴという小型の魚の群れをマグロの水槽に入れ、異常が起きないか、いま観察しているさいちゅうだ。

▼元伊勢神宮の神官で、サメの研究でも知られる矢野憲一さんによると、日本神話の中で兄の海幸彦から借りた釣り針をなくし、海の底の国まで探しに行った山幸彦を地上に送り届けたサメは、シュモクザメではないかという。印象的なその姿に驚いて、古代の人々はシュモクザメを頭に刀を持った神の使いと考えたようだ。

▼マグロが群れをなして泳ぐ大水槽は、葛西水族園の展示の目玉だった。サメとタカサゴが泳ぐ景色も悪くはないが、やはり迫力満点の群泳をもう一度見てみたい。水族園ではシュモクザメなどに変化がなければ、次はマグロに近い種類の魚を入れて復活を探るという。神の使いのサメが下す「群泳再開」のご託宣を待とう。

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