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エボラ流行から世界が学ぶべきこと

西アフリカでエボラ出血熱の流行が始まって1年がたつ。ギニアやリベリア、シエラレオネなどでの死者は合わせて1万人を超えた。感染拡大はヤマを越えたとの見方があるが、予断を持たず注視し続ける必要がある。

エボラの流行は、国境を越えて広がる危険な感染症に対し国際社会の備えが脆弱であることを浮き彫りにした。新型のインフルエンザや中東呼吸器症候群(MERS)などエボラ以外にも警戒すべき感染症がある。世界のどこかで起きる流行に備え、国際的な態勢づくりが求められる。

「エボラは対応が比較的容易な感染症だ」と東北大学の押谷仁教授は話す。患者の体液に触れなければうつらない。インフルエンザなどはくしゃみの飛沫でうつり、気がつかないうちに感染しウイルスを拡散する危険がある。封じ込めはエボラより難しい。

今回のエボラの流行では世界保健機関(WHO)の対応が遅れた。資金や人員の不足から危機管理能力に欠ける実情があらわになった。その反省から緊急時の対応力を高めるためWHOに1億ドル規模の基金を設ける計画がある。

それだけで十分だろうか。流行の背景には社会の混乱と貧困がある。途上国の政情安定と保健・医療基盤の整備にも国際社会が力を尽くすべきだろう。ワクチンや診断薬の開発にも努力する必要がある。世界銀行は新型インフルが大流行すれば3兆ドルの経済的被害が生じると試算する。地球規模での危機管理が求められている。

欧米や中国などは現地に医療チームなどを送り、支援にあたった。日本はWHOを通じ医師らを十数人を派遣し、防護服など資材提供や1億ドルを超える規模の支援を行ったが、存在感は薄かった。

流行国は日本から遠く、邦人も少なく、やむを得ない面はある。しかし危険な感染症への対応を実地で学び、経験豊かな専門家を育てる機会を逸したのも確かだ。

多数の日本人が住む身近なアジア地域で新型の感染症が流行した場合、日本は当事国などと協力して封じ込めの先頭に立たねばならない。国内への飛び火も現実味が増す。そうした事態に迅速に対応できる医師ら専門家の数は決して十分ではない。

国内で人材育成に力を入れるとともに、海外での緊急時に臨機応変に専門家を送れる態勢を整えていくべきだ。

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