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IT活用 薬の次は不動産取引 テレビ電話で「重要事項」

野呂エイシロウ(放送作家・戦略PRコンサルタント)

新年度を機に引っ越した人も多いだろう。その際「宅建」とよばれる資格をもった宅地建物取引士が、資格書を見せながらアパートやマンションなど借りる物件の諸注意など「重要事項説明」をしたはずだ。これが実に面倒。わざわざ不動産屋に行かなければならない。だがそんな面倒な手続きが、インターネットで簡単にできる日が来るかもしれない。

国土交通省が「ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会」を昨年立ち上げた。IT(情報技術)企業を中心とした新経済連盟(新経盟)が要望し議論が動き出した。

いまは不動産を借りる契約を結ぶ際、宅建が客とじかに会い、取引物件についての権利関係などを説明することが法律によって義務付けられている。それを、ネットでのやりとりで済むようにしようと検討している。今夏にもITを活用した簡略化の社会実験が始まる予定だ。

では、ネットでどのように簡略化するのか。双方の表情が確認できるテレビ電話を使って宅建の資格を持っている不動産屋の担当者と利用者を結び、遠距離でやりとりするという。

契約書を電子化して送るのか、あるいは紙に印刷したものを郵送するかなどクリアしなければならない課題は多い。

取引主任者になりすましたり説明内容の誤りなどを原因としたトラブルが増えたりするとの懸念の声もあるものの、利用者のメリットは大きい。

まず不動産屋に行く手間と時間が省ける。いまは会社に行く前とか、会社から帰った後など、不動産屋の営業時間に左右されている。ネットに対抗しようと、24時間営業する不動産屋がでてくるかもしれない。

とくに遠距離の引っ越しの場合は負担がだいぶ減る。たとえば大阪から東京へ引っ越す場合にも上京しなくても済む。引っ越しに伴う時間的、交通費など経済的負担が大きく軽減される。

利用者だけでなく、不動産屋側にも利点がある。たとえば複数の営業所にいる宅建の資格を持った担当者を本社1カ所に集めて、ITで対応すれば人件費が減る。浮いた経費で、契約が成立した時に利用者が不動産屋に支払う仲介手数料が下がることも期待できる。

高齢者らネットを使うのが苦手な人はこれまで通り、不動産屋に出向いて重要事項説明を受ければいい。利用者にとって、選択肢が増えるのはよいことだ。

この議論はどこかで聞いたことがある。薬だ。薬も少し前までは薬剤師がじかに対面で販売しなければならなかった。だが、今は一般用医薬品(大衆薬)のネット販売が解禁されてネットでも販売できる。テレビモニターが付いていて薬剤師が帰った後も薬の相談ができる薬局もある。

社会実験は最長2年間。まずは法人取引と個人の賃貸契約に限り行う予定だ。ワンルームマンションを扱う日本財託(東京・新宿)は実験への参加を表明。法人営業部の佐藤友昭さんは「ネットを使った重要事項の説明が可能になれば、遠方地に住む客の利便性は高まる。上京する学生さんらに積極的に活用していきたい」と話す。賃貸派の私は引っ越しの度に重要事項説明を受けてきた。今度どうなるのか注視したい。

[日経MJ2015年4月13日付]

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