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妻のツイートに1万人反応、夫のアプリが一躍有名に

(徳力基彦)

先月末、ツイッター上のある投稿がちょっとした話題になった。これが投稿された内容だ。

「昨日スケジュール管理アプリ(無料)をリリースした夫が、とても使い勝手よくて自信あるアプリだけど起業したての無名企業だからリリース送ってもどこも取り上げてくれないと部屋の片隅で突っ伏していたので、よろしければ見てみてください(・ω・)timetreeapp.com」 

奥さんのつぶやきが多くの人の目にとまり、リツイートは1万人を超えた

このツィッターのアプリ「TimeTree」は、JUBILEE WORKS(東京・渋谷)という設立間もない企業が出した、複数人で使うスケジュール管理アプリ。アプリを発売したがどのメディアにも紹介されなかった。落ち込んでいる代表者の夫を、奥さんが少しでも応援してあげたいと投稿したようだ。

スマートフォン(スマホ)向けに新しいアプリを発売しプレスリリースを送ったが、記者に相手にされず一つも記事が掲載されなかった。こんな例は珍しくない。

今やスマホ向けアプリは世界中の企業が毎日のように新しいアプリを世に出してくる。大量に発信されるリリースの中から無名企業の情報が記者の目に留まり掲載されることはめったにない。

ただ、「TimeTree」の場合、奥さんによるツイッターの投稿が1万人以上に再投稿され、一夜にして世間の耳目を集めた。

読者は、この奥さんが元々大量のツイッターのフォロワーを抱えていたのだろうと思われたかもしれない。だが、彼女のフォロワー数は記事執筆時点で610人程度にすぎなかった。

フリーライター歴10年超で文章を書くのは得意だったかもしれない。ただ表現の巧みさより「夫を何とかしてあげたい」という奥さんの必死さが多くの人の心を揺さぶったのだろう。140字と文字数が限られた世界でも、言葉の力の可能性が底知れないことを感じさせる事例といえる。

この投稿がきっかけとなり、投稿と同じ週の週刊アスキーのニュースサイト「週アスPLUS」に紹介された。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。14年3月から取締役最高マーケティング責任者(CMO)。

もっとも、この奥さんと同じようなことを試みたからといって、これだけ話題になるとは限らない。「TimeTree」を使った人達のツィッターの投稿に、アプリの使い勝手が良かったという感想が多い点が重要だ。 同社の担当者が投稿ひとつひとつに、丁寧に返信しているのも好印象に拍車をかけたのだろう。最終的には、商品力やサービスの良さが欠かせない。

この事例で皆さんに知っていただきたいのは、ソーシャルメディアの普及で誰もが情報発信者になれる現在、企業メディアに取り上げられないからといって、機会が断たれるわけではないという点だ。

ネット上で話題になるとメディアにも取り上げられることが多いため、今回のように1人の投稿が起点となったことが確認できる事例は少ない。

ただ、あるアプリや商品の利用者1人のブログ記事やツイッター、投稿動画がきっかけとなり利用者が増える現象は珍しくない。むしろ、最初から企業メディアに取り上げられることのほうが少ないくらいだ。

広報やPR活動はプレスリリースの配信だけでない。誰もが情報発信できるネットの世界では、情報がどう拡散するか未知数だ。皆さんの会社でもまだできることがあるのではないだろうか。

(アジャイルメディア・ネットワーク取締役)

〔日経MJ2015年4月10日付〕

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