2019年5月27日(月)

死んでたまるか 伊東潤著 諦めない大鳥圭介の覚悟

2015/4/9付
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(新潮社・1700円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(新潮社・1700円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

大鳥圭介といえば、『燃えよ剣』(司馬遼太郎)では、実戦経験がないにもかかわらず、仏式幕軍の将校にまで登りつめたことを鼻にかけ、土方歳三のことを「あれは剣術屋だよ」と見下す、敵役的存在。本書はその大鳥を主人公とした初の長篇(へん)。

2人のどちらが格好良く描かれているかといえば、それは土方の方で、しかしながら、そこには作者の周到な計算がある。

決してブレない土方は、苦悶(くもん)しつつも官軍と戦う大鳥を映し出す鏡であり、やがてその鏡に映っている大鳥の像は、次第に土方を脇へと追いやり、実像として(ヽヽヽヽヽ)の主役の座を勝ち取っていく。

両者の違いは、滅びの美学=死地を求める土方と、決して諦めない=敗北を喫しても生を続ける覚悟を決めた大鳥との差異だ。

先日、東日本大震災4周年のニュースで、母親を見捨てざるを得なかった女生徒が、犠牲者たちの祭壇の前で、自分の心情を朗読するのを見て、涙が止まらなかった。そして同時に、思わずこれだ、と本書の大鳥を思わずにいられなかった。生き残る側を引き受け、負の力を正に転換した時、見えてくるのは何か。堂々たる傑作である。

★★★★★

(文芸評論家 縄田一男)

[日本経済新聞夕刊2015年4月8日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

死んでたまるか

著者:伊東 潤
出版:新潮社
価格:1,836円(税込み)

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