2019年6月25日(火)

本社機能の海外移転とどう向き合うか

2015/4/6付
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グローバル化を加速するために、本社機能の一部を海外に移す日本企業が珍しくなくなった。

パナソニックは映像機器や通信機器を担当する社内カンパニーの「AVCネットワークス社」の榎戸康二社長を今月から米東海岸に常駐させ、買収や投資の意思決定を含めて米国を中心に事業を進める体制を整える。

日立製作所も昨年、世界全体の鉄道事業を束ねる本社機能をロンドンに移した。そのトップに就任したのは、鉄道車両の世界的大手である仏アルストムに勤務した経験もある英国人のアリステア・ドーマー氏だ。

このほか高級車部門の「インフィニティ」の本社を香港に移した日産自動車や、金属資源のトレーディング部門の本拠をシンガポールに移した三菱商事、海外事業の司令塔をスイスのジュネーブに置く日本たばこ産業など、業種の枠を超えて本社機能を外に切り出す動きが広がっている。

企業経営の立場からすれば、こうした海外展開は理にかなったものだ。パナソニックのAVC社は個別の消費者に売り込む従来のビジネスを改め、法人ユーザーからの大型受注獲得をめざす事業モデルへの転換を急いでいる。

米国には機内娯楽設備の大口顧客であるボーイングなど有力企業が多く、彼らと密着して仕事をすることが事業改革の決め手になると判断した。

海外に出れば、日本では聞こえてこない情報も耳に入ってくるだろう。海外拠点を出先扱いせず、自由裁量を与えて魅力あるポストを用意すれば、能力の高い外国人の採用も容易になる。

彼らと机を並べて働くことで、日本から派遣された社員も鍛えられ、言葉も含めて国際的に通用する人材の育成も進むはずだ。世界展開を志す企業にとって本社機能の海外移転は多くの利点があり、一考に値する経営手法である。

一方で日本経済の視点から考えると、工場などに続いて、本社部門まで外に出て行くとなると、国内の空洞化が懸念される。

それを防ぎ、良質な雇用を国内に確保する環境をつくるのは政府の役割だ。法人税などのビジネスコストを引き下げ、優れた人材を輩出する教育体制を整え、「日本で事業をしたい」という企業を外資を含めて増やしたい。外に出て行くのも内に入るのも、ともに活発。それが目指すべき姿である。

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