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春秋

数々の名勝負の舞台となったスポーツの聖地が生まれ変わる。2020年東京五輪を機に、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を交換し建て替える。周辺を大会後もにぎわう地域にする再開発計画だ。緑地を保ちながら商業施設や住宅も誘致、街づくりに生かすという。

▼取り換えることで、新しい価値が生まれる。不思議な気もするが、よく考えてみれば経済活動は物の交換から始まった。商いが生じ、利を生む。昔話の貧しい男は、道で拾った藁(わら)で虻(あぶ)を縛る。これを欲しがった若殿に与えて蜜柑(みかん)をもらう。次いで布と、さらに馬と換える。ついには、家と田を得て「わらしべ長者」となる。

▼経済だけではない。文化人類学者の山口昌男さんによると、交換は「人間の存在を何か違ったものに変換していく」という(「文化人類学への招待」)。言葉のやりとり、コミュニケーションに交換の起源があり、人間の社会的つながりを強める。交易や贈り物が人を結ぶ。元来別だった関係を変えて、新しくするそうだ。

▼最近、オフィス街で緊張気味の顔をよく見かける。新入社員の彼らが最初に経験するのも、この変換効果かもしれない。名刺交換は仕事の基本だ。研修で渡し方も教わるだろうか。ちっぽけな紙片が情報網や人間関係を広げる。学生時代とは異なる世界を開き、新しい価値を生み出し、人間を違ったものに変換してくれる。

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