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旅立つみなさんの使命 情熱から新たな物差しを

インテカー社長 斉藤ウィリアム浩幸

3月末は、日本では「卒業式の季節」です。米欧の卒業式は一般的に6月。舞い散る桜のイメージとぴったり重なる美しい旅立ちの情景は日本に特有かもしれません。

実は私、米国の母校から、卒業式のスピーチを頼まれました。近年はスティーブ・ジョブズ、イーロン・マスクら、著名な起業家の卒業式スピーチがメディアに取り上げられることも多くなり、想定ハードルの高さに私、いささか緊張しております。今回のコラムでスピーチの草稿を読者のみなさんに読んでいただき、卒業生の心に響くものがあるかどうか判定していただきたい次第です。

卒業式を迎えたみなさん。おめでとうございます。こんな大変な時代に社会に飛び立つことになるとは――と悲観している方はいませんか。私は、社会に出るこのタイミングは、人類史上まれに見る幸運だと断言します。なぜか。

米デューク大学のキャシー・デビッドソン氏が語った「2011年に小学校に入学した子どもの65%は、大学を卒業した後に今は存在していない職業に就く」という未来予測をご存じでしょうか。

コンピューターが人間の知性を超える転換点(シンギュラリティー)は45年に来るという予測もあります。これからわずか20年の間に、社会のルールはSF映画を超えるほど激変することでしょう。20~40代の働き盛りの年齢で、かつての産業革命とは比較にならない、巨大な変化の時代を迎える。何という豊かな使命でしょうか。

みなさんが働くとき、最重要のテーマは「ルールの順守」ではなく「ルールの革新」にあると考えてください。「ルール」の語源はラテン語で「物差し」です。20世紀まで通用していた物差しは、直線しか測ることができませんでした。21世紀に必要とされる物差しが従来と同じでは物足りません。社会は複雑化し、常識はパラレルに拡大し、まっすぐなだけでは測れないものが多すぎるのです。

目上の人間は、従来の物差しを強要してくるかもしれません。会社は学校と違ってフェアではありません。格差があり、理不尽があります。しかし「これでいいのか?」と疑問を感じたときこそ、改めるべき古いルールに気づいた瞬間なのだと、発想を転換することが大切です。

斉藤ウィリアム浩幸

チャレンジには苦労がつきものです。失敗することも多いでしょう。学生時代よりも多くのことを身につけなければ、ルールを革新するような大事業は達成できません。翌日に持ち越すような深酒は慎み、趣味を持って幅広い視野を獲得し、同僚を無償で助けるボランティアの精神を大切にして、幅広い人脈と仕事への情熱を育ててください。

ルールを革新する人間であり続けることは、理想的な自分像を絶え間ない努力で探求することとイコールで、まるでスーパーマンであれという小言のようです。しかし、そうでなければあなたは歴史とともに消えていく65%の職業の1人として、もっと大変な、つまらない苦労に追い回されてしまうことでしょう。

人類がこれから出会う未知のルールは、窮屈で退屈な人間からではなく、未来に向かって大きな夢や野心を掲げている若者たちの情熱の中から生まれてくることを願います。人生は過酷で、予測がつきません。「だからこそ楽しんだ」と、みなさんが20年後の後輩に偉ぶって語る日を心待ちにします。

(インテカー社長 斉藤ウィリアム浩幸〈ツイッターアカウント @whsaito〉)

[日経産業新聞2015年3月27日付]

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