春秋 - 日本経済新聞
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春秋

東京の郊外は関東大震災を境に開発が進んだとされる。高級住宅街の国立(くにたち)も当時、民間企業が手がけた大規模分譲地のひとつだ。その開発初期、昭和4年に医師の私邸として建てられた2階建ての洋館が今月末で取り壊されることになり、いま特別に一般公開している。

▼地元の建築家や編集者らが町の原点を知ろうと企画した。外観デザインだけでなく石炭ボイラーによる集中暖房など設備も最先端だった。子供部屋を1階中央に、応接間を2階の隅に置く家族優先の間取りも先駆的だったと、調べた建築家は報告する。外は豊かな自然。内には近代的な暮らし。そんな夢の残り香を感じる。

▼戦後の高度成長期も東京圏は広がり続けた。しかし近年は湾岸の再開発や超高層マンションの誕生などで人口の都心回帰が進んでいる。団地やニュータウンも含め、郊外が「高齢化」や「増える空き家」とセットで語られることも多い。交通の不便な一部の町では中古マンションがびっくりするような安値で売られている。

▼町の魅力を高める主役は、そこに住む人たちだ。自分たちの町をよくしていこうとの機運が盛り上がると、必ず始まるのが歴史の掘り起こしだそうだ(三浦展著「郊外はこれからどうなる?」)。均質にみられがちな郊外の町も歴史という光で顔が生まれる。自分も引退後はそんな活動に携わってみたいと考えたりもする。

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