スマホゲーム「隙間時間」奪う 手軽さ、時代にマッチ
(徳力基彦)
スマートフォン(スマホ)向けパズルゲームアプリ「パズル&ドラゴンズ」。ガンホー・オンライン・エンターテイメントの大ヒットゲームだ。「パズドラ」の略称でテレビCMも頻繁に流れており、耳にした人も多いだろう。今年2月にリリースから3周年を迎え、国内ダウンロード数は3400万を突破した。

単なるダウンロード数より、どれだけの人が継続的にこのゲームで遊んでいるかがビジネス上は重要。その指標になるゲーム内の課金ランキングでもパズドラは長らくトップ争いを続けている。
かつて携帯電話向けゲームは毎年のように主役が入れ替わるのが常だった。2007年にはグリーの釣りゲーム「釣り★スタ」がヒットし、09年はディー・エヌ・エー(DeNA)の「怪盗ロワイヤル」や、ミクシィを中心に3カ月で300万人を集めた「サンシャイン牧場」などがヒット。ソーシャルゲームと呼ぶ新たなカテゴリーを確立した。
その後も11年にグリーの「探検ドリランド」が大々的なテレビCMのキャンペーンを展開して話題になるなど、様々なケータイゲームが注目を集めた。一時期は行きすぎた課金誘導が社会問題にもなるほどだった。
ただ、こうした人気ゲームが注目されるのはだいたい1年ほど。基本的にユーザーは次々に新しいゲームに乗り換えるため、その前提で多くのゲーム会社が新ゲームを次々に投入し続けてきた。
パズドラが3年もの間スマホゲームのトップに君臨し続けてきたのは特筆ものといえる。海外の調査によると、ガンホーの収益性の高さは世界のアプリメーカーの中でトップ3に入るという。
こうした快進撃を見ていて参考になるのは、パズドラがスマホ時代に最適化されたアプローチをとっている点だ。
長い人気の特徴の一つが、タイトルに「パズル」とあるように、細切れの隙間時間でも十分楽しめるサイズのゲーム性にある。日本では、特に都心で電車で移動する人が多く、電車待ちの時間や移動時間など細切れの時間がたくさんある。
従来の家庭用ゲーム機は数時間プレーするのが普通だったが、そうした本格ゲームは細切れの時間で楽しみにくい。数分程度の隙間時間でもやれるというのはスマホ時代のポイントだろう。

パズドラのもう一つの特徴は、継続する「育成」の要素だ。パズドラは自らを「パズルRPG(ロールプレーイングゲーム)」と定義する。「ドラゴンクエスト」のようなRPGと同様、自分の味方となるモンスターのレベルを上げる育成が重要になる。
長くプレーするほど自分のモンスターが強くなり、強い敵に勝てる確率も高まる。飽きられやすいパズルゲームに、飽きにくい構造を組み込んでいるのだ。
しかも行きすぎた課金が問題になったソーシャルゲームとは異なり、課金なしでも十分に楽しめるようになっている。課金をしないユーザーは企業側の直接収入にならないものの、ゲームの面白さを口コミで周りに広げる役割を担っている。無課金ユーザー向けを明確にうたった攻略サイトが無数に存在するほどだ。
ゲーム自体が3年間、継続して進化し続けているのも大きな特徴だ。パズドラは頻繁にイベントを開催したり、ゲームシステムを進化させたりしている。そのため毎月のアクティブユーザーが飽きずにいられるようだ。
「隙間時間」に何かをしてもらうための努力をし続けるガンホーの姿勢はゲームだけではなくウェブサービスやアプリなどにも参考になる。パズドラを全く見たこともない人も、これから試してみてはいかがだろうか。
(アジャイルメディア・ネットワーク取締役)
〔日経MJ2015年3月13日付〕