春秋

2015/3/10付
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波打つ日本海を背景に走る新幹線。その向こうには、雪をいただいた立山連峰がそびえ立つ――。今週末に控えた北陸新幹線の開業より一足早く、こんな「風景」を眺められる場所が東京都内にある。もっとも、そのためには服を脱いで裸になる必要があるのだけれど。

▼富山市の物産販売や観光業者などでつくる会が、都内の銭湯に立山の景色を描いてもらう試みを続けている。定番は富士山なのだが、経営者に富山ゆかりの人が多いことに目を付け、5年前に始めた。いまは8カ所の湯船が、立山を仰ぐ特等席になっているのだという。銭湯の絵にも、意外にバリエーションがあるものだ。

▼千葉・検見川の「梅の湯」には、東日本大震災の津波に耐えた岩手・陸前高田の「奇跡の一本松」が描かれている。必ず夜は明ける、との思いを込め、背景は朝焼けにした。評判を聞いて訪れた人が、「あそこに私の家があったんです」と涙を流したり、絵に向かって「頑張っているかー」と声をかけたりしているという。

▼被災地ではどこでもといっていいほど、銭湯が再開すると列ができる。食料や水と同じように、大切なお風呂。「皆さん肩までお湯につかると、必ず笑顔になります」。阪神大震災の後に仮設銭湯を設置した自衛隊員が話していた。今年も「3.11」がめぐってくる。震災が教えてくれる日常のありがたみがここにもある。

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