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ツイッターで中傷、深刻化 常習犯締め出しが課題

瀧口 範子(フリーランス・ジャーナリスト)

「ツイッター・アビューズ」問題が、ようやく日の目を見ることになった。ツイッター・アビューズとは、ツイッターでの悪意のある誹謗(ひぼう)中傷だ。以前からある問題だが、先ごろツイッターのディック・コストロ最高経営責任者(CEO)が「誹謗中傷は次から次へと追撃する」と決意を述べ、解消への希望が出てきたのだ。

コストロCEOの決意表明は、ある記事がきっかけだった。フェミニストのライターが書いた記事で、彼女が日常的に受けているツイッターでのアビューズがつづられ、それをツイッターに報告してもラチがあかないことが告げられていた。

その少し前にも、1週間で157件もの誹謗中傷ツイッターを受け取った女性のゲーム評論家が歩み出ていた。彼女はその画像を別の交流サイト(SNS)である「タンブラー」に掲載して実態を世界に公開。ツイッターの中で闘ったり自己防御したりしても一向に事態は改善しないため、外に向け叫んだわけだ。

彼女らに対するアビューズを見ると、4文字言葉が満載なうえ、「目の前から消えろ」「死ね」「レイプしてやる」と醜悪な表現が並んでいる。もちろん男性に対する誹謗中傷も決して美しいものではないだろうが、ことに女性の弱みを狙って身の危険も感じさせるような言い回しが多く使われているのが特徴だ。

ツイッター・アビューズを受けた人々は、ツイッターへの報告手順が長くて時間がかかり、報告後も何ら改善されないことがほとんどだったと述べている。特定ユーザーをブロックしても、そのユーザーが新たなアカウントを作って攻撃を再開することは簡単だ。いったん狙われたら執拗な攻撃が続いたという。

インターネットと社会の問題を調査するピュー・リサーチセンターによると、成人インターネット・ユーザーの73%が、特定の人がアビューズの対象になっているのを目撃したことがあり、40%は自分自身がその対象になったという。なかでも18%の人は身の危険を感じるような脅迫やストーキング、長期にわたる嫌がらせや性的嫌がらせの対象になった。この重度なアビューズは特に女性が対象になるケースが多いのも明らかになった。

ツイッターはその後、アビューズ対応の担当者数を3倍に増やし、報告手続きを簡略化した。また対象になったユーザーだけでなく、誰かが攻撃されていることを第三者もリポートできるようにしている。

また、たびたびアビューズを行うようなユーザーは電話番号で照合して新たなアカウントが作れなくなる処置を取ることにしたという。常習犯をこの手でくい止める狙いだ。効果はこれから明らかになるだろうが、とりあえずはアビューズに対して新たな手が打たれたことで、状況が好転すればと希望したい。

またアビューズ以外でも、ツイッターでのちょっとした失言や冗談が別の意味で解釈され、職を失った人も少なくないようだ。口頭での失言なら取り消したり謝ったりすることで収められるが、いったんツイッターで広まって炎上すると火は消せない。そうなると社会の袋だたきに遭うという状況だ。

非難の言い分は正しくても、その量が過剰になる。こうしたことを食い止めるためのユーザーの行動規範は、まだ確立していない。

[日経MJ2015年3月9日付]

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