春秋

2015/3/4付
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窓のない世界は想像もできない。風や光を取り入れ、外の景色を眺める。古来、建物、住まいに欠かせない設備だ。冬の間、北側は寒風を防ぐために閉め切っていることも多い。それも、気温が上昇してくれば開け放つ。すると、いっぺんに春の気配が流れ込んでくる。

▼リルケの詩がある。「窓よ、われわれの大きな人生を雑作もなく区限(くぎ)つてゐる。いとも簡単な図形」(堀辰雄訳)。ひとは、多様な図形から世界を眺める。形も四角や丸など色々。見え方も変わる。目の前の出来事だけではない。見えない心の枠組みを通して外を見ている。人間にとって欠かせない働きなのかもしれない。

▼大昔はぜいたく品だった。イギリス、オランダなど欧州では窓に課税していた。そこで節税のために閉じて数を減らした。いまやあるのが当たり前、窓のない家はないだろう。そのガラスに張るだけで「夏涼しく冬暖かい」とうたった断熱フィルムがある。外から入る熱を削減、反対に逃げる熱も減らす効果があるという。

▼先週、消費者庁は宣伝ほどの効果がないと、製造販売会社に改善を求めた。会社は命令の取り消しを求めて、法的に争う方針だという。技術が進歩して、便利になっても、窓の基本的な役割は変わらない。やはり晴れた日には、広い世の中を遠く見渡したい。ぜいたくをいえば、そのままで夏涼冬暖ならありがたいのだが。

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