春秋 - 日本経済新聞
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春秋

擬音語や擬態語をまとめてオノマトペという。日本語はこれが豊かだ。たとえば笑い方。にこにこ、くすくす、かんらかんら、へらへら……。にっこり、のように、同音のくりかえしでない表現もある。学術論文や公文書にはなじまないけれど、日本語の魅力の一つだ。

▼先週の19日に安倍晋三首相が見せた笑顔は、どう表したらいいだろう。衆院予算委員会の初日、民主党の玉木雄一郎議員が西川公也農相の政治とカネの問題を追及した際に「日教組はどうするの」とヤジを飛ばした、あの表情だ。ヤジという品のない行為にぴったりはまる、という意味では「にやにや」という言い回しか。

▼翌日、民主党の前原誠司議員から批判を浴びて、首相は次のように応じた。補助金をもらっている日教組の関連団体から献金をもらっている議員が、民主党にいる――。なるほど、ヤジの背景にはそんな情報があったのか、と思いきや。週が明けたきのう午前、首相は答弁の一部を訂正した。「正確性」を欠いていた、と。

▼そして、きのうの夕方。西川農相は首相に辞表を提出した。唐突感は否めない。首相が飛ばしたあのヤジは、いったい何だったのか。辞表を受け取って「任命責任は私にあります」と語った首相の表情は、いよいよこわばっていて、うまいオノマトペが思い浮かばない。国民の気分なら「うんざり」でしっくりくるのだが。

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