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ジョナサン・アイブ リーアンダー・ケイニー著

アップルの開発プロセス 綿密に取材

「息をのむほどシンプル」。これがアップル製品のデザインの特徴だ。そうした優れたデザインワークはいかにして可能だったのか。本書はこの疑問に十二分に答えてくれる。

(関美和訳、日経BP社・1800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

本書の主人公、アップルのトップデザイナー、ジョナサン・アイブは1967年に英国に生まれた。ジョナサンはデザイン学校の教師であった父親の影響を受けて育つ。父は「デザインストーリー」が重要だと息子に教えるが、この教えが後年アップルでの開発作業に役立つ。ジョナサンはティーンのころからデザインの才覚を表す。大学で工業デザインのテクニックだけでなく、ものづくりに必要な材料の扱い方なども学んだ。

また、ジョナサンの受けたデザイン教育はドイツのバウハウスの哲学を受け継いだものであった。現在のアップル製品がミニマリズムの伝統を引き継いでいるように見えるのはこの影響もあるだろう。

ジョナサンが米国でアップルに入社したのは、シリコンバレーで働いていたブルーナーの誘いによるものだった。ブルーナーを驚かせたのは、ジョナサンが製品の形だけでなく、実用性や使い勝手はもちろん、中に収められた部品を全て計算し、その上に、製造工程までを想定してデザインしていたことだ。

ジョナサンはリーダーとしての素質にも恵まれている。彼の入社でアップルのデザインチームは大きな飛躍を遂げる。アップルのデザインチームの特徴をまとめてみよう。(1)デザイナー全員でアイデアを出すためのブレーンストーミングが頻繁に開かれる(2)デザインのプロセスのすべてが写真や文字で残される(3)「製品ストーリー」が最初に考えられ、日常でどう使われるかが具体的にイメージされる(4)エンジニアではなくデザイナー主導型の開発(5)社内のデザイナーと社外のスタッフが関わるパラレルデザイン開発(6)最新のCAD・CAM(コンピューターによる設計・製造)で模型工房が統合され、金型メーカーとデザインを共有できる。

そしてジョナサンとスティーブ・ジョブズとは、お互いに異なった性格でありながら、ジョブスの直感的デザインセンスに支えられて二人三脚で開発を進める。本書で描かれるアップルの新製品開発のプロセスは著者の綿密な取材によるものだ。アップルの内部模様がこれまでになく詳しく報告されていることに驚かされる。本書を読まずにアップルの戦略を語ることは今後できなくなるだろう。

(中央大学教授 田中 洋)

[日本経済新聞朝刊2015年2月22日付]

ジョナサン・アイブ

著者:リーアンダー・ケイニ―
出版:日経BP社
価格:1,944円(税込み)

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