春秋

2015/2/21付
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東京・上野公園で光に縁のある2つの展覧会を見た。光とは何か。人との関わりや探究の歴史、成果を紹介しているのが「ヒカリ展」。暗闇で石や昆虫や動植物が発光する。北極圏のオーロラが目の前で揺れ動きエメラルド色に輝く。3D眼鏡による疑似体験も楽しい。

▼もう一つが「新印象派展」。19世紀末から20世紀初頭、太陽光を追いかけた欧州の画家たちによる色彩革命の現場に出合える。どの絵も明るい。反射し、きらめく水面や港の風景が浮き上がる。印象派が見つけた技法に、当時の科学的な色彩理論を応用した点描の効果だそうだ。画面から明るい光への憧れが伝わってくる。

▼憧れは渇望に近かったらしい。欧州の冬は暗く長い。昔から冬空の下、暗い森の中で明かりのない生活に慣れてきた。2月ごろは、暗雲が空を覆い、ひたすら春と光の到来を待ち望む。日光に執着する心情には「きわめて切実なものがあった」。そんな背景を歴史家・木村尚三郎さんの「色めがね西洋草紙」から教わった。

▼だから、冬を追放する謝肉祭に熱狂する。今週、テロ警戒で北ドイツの都市の行列が中止された。市長は泣いて悔しがった。日本は欧州ほど切実ではないが、思いはわかる。こんな古人の歌もあるのだから。「谷深み春の光のおそければ雪につつめる鶯(うぐいす)の声」(菅原道真)。春を呼ぶ祭りさえ邪魔される世界は御免である。

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