残りの人生で、今日がいちばん若い日 盛田隆二著
ゆっくりでも前を向こう

盛田隆二はタイトルがうまい。近年のヒットは『きみがつらいのは、まだあきらめていないから』で、そうだよなあと納得する。おっしゃる通りだ。これをタイトルに持ってくるのが盛田隆二のセンスなのである。
本書もこの長文タイトル路線で、こちらもうまい。「残りの人生で今日がいちばん若い日」というのは、ラジオのパーソナリティが喋(しゃべ)った言葉として小説に登場する。そういうふうに考えれば何か新しいことにチャレンジするにしても、いつだってけっして遅くはないという気がしてくる――とパーソナリティは言うのだ。
出版社に勤める書籍編集者の柴田直太朗39歳と、書店で働く山内百恵39歳の心と体が少しずつ接近し、寄り添っていくかたちを本書は描いていくが、直太朗にも百恵にもそれぞれの事情がある。だからまっすぐ進まない。自分の心に気がつくまでも時間がかかるが、そのあともねじれてこじれて、すみやかには進まない。しかし、残りの人生で今日がいちばん若い日なのだ。俯(うつむ)いて日々を過ごすことはない。前を向こう。そういう力が湧いてくる。これが盛田リアリズムだ。
★★★★
(文芸評論家 北上次郎)
[日本経済新聞夕刊2015年2月18日付]
★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった
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