春秋

2015/2/17付
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こんにちは。ありがとう。意識せずとも頭は下がる。おじぎのしぐさは日本人の身に染み込んでいる。しっかり目を合わせて握手するつもりが、視線が外れて戸惑う欧米人も少なくない。手を握りながら上目づかいで礼をする折衷型もあるが、なんとも滑稽な姿となる。

▼京大の研究者がニホンザルの独特な挨拶の文化を発見した。けんか寸前になると、お互いの体をハグして緊張を緩めるそうだ。南北で地域差があり、宮城県の金華山では正面から長く抱擁して体を揺するが、屋久島では体の横から軽く抱いて手のひらを閉じたり開いたりする。南と北のサルが出会ったら、どうするだろう。

▼サルですら紛争回避の知恵がある。人間はどうか。ウクライナの停戦合意はとりあえず守られているようだが、これまでに5千人以上もの尊い命が銃砲で奪われている。デンマークでは男が銃をいきなり乱射し、7人が死傷した。自分と異なる宗教や民族を許せず、憎悪が満ちあふれて一触即発となった人間社会は悲しい。

▼8年ほど前、モスクワでこんな取材経験をした。柔道家でもあるからだろう。こちらが日本人とみると、プーチン大統領は流れるようにおじぎをしてみせた。日本式に目は伏せていた。ふと緊張が解け、自然に笑顔が出た。あのぬくもりのある間合いを、忘れたくない。忘れてほしくない。進化した人間の英知を信じたい。

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