2019年9月23日(月)

裁判員制度の課題を示した最高裁決定

2015/2/15付
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一審の裁判員裁判が被告を死刑とした判決を、プロの裁判官だけで審理する二審の高裁が覆して無期懲役に減刑した計3件の裁判で、最高裁が二審の判断を支持する決定を出した。

市民感覚を反映させることが裁判員制度の目的であり、裁判員の判断は十分尊重すべきである。だからといって、積み上げられたこれまでの判決と刑の重さが大きく違っては公平性が保てない。これが最高裁の示した考え方だ。

特に死刑は、被告の命を奪う究極の刑罰である。最高裁が「裁判員裁判でも、過去の量刑判断を出発点として評議を行うべきだ」として慎重な検討を求めたのは、妥当といえるのではないか。

死刑にあたるかどうかを判断する際、これまでの裁判では、犯行の動機、計画性、被害者の数などを検討する「永山基準」が用いられてきた。最高裁の指摘は、一審の判決はこの基準から外れているということである。

3件のうち東京と千葉の強盗殺人事件は、被害者が1人だった。最高裁は被害者が1人の場合でも死刑はありうるとしながら、「被告の前科や反社会的な性格傾向を重視しすぎている」「犯行に計画性はなかった」などとして、死刑の判断を退けた。

もう1件の長野の事件は被害者が3人だったが、この裁判の被告は事件の首謀者ではないことから、二審で減刑されていた。

もちろん最高裁も、過去の例を機械的に当てはめて判決を出すべきだといっているわけではない。裁判の公平性を維持しながら、市民感覚をどういかしていくか。裁判員制度が持つこの大きな課題が改めて示されたものとして受け止めるべきであろう。

ただ、裁判員に選ばれる市民の側としては不安も残る。最高裁の決定は明確な基準を示したわけではなく、「裁判員はバランスを考えて総合的に判断すべきだ」ということにすぎないからだ。

議論を深めるために知りたいのは、一審のそれぞれの評議の場で裁判官が過去の量刑の意味をどう説明し、それを裁判員がどう受け止めて判決を導いたか、である。

ところが裁判員には罰則付きで守秘義務が課せられており、評議の様子はほとんど分からない。過去の量刑と市民感覚のバランスのあり方を考えるためにも守秘義務を緩和し、裁判員の経験を社会全体で共有していく必要がある。

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