2018年7月18日(水)

国際環境の変化が促すODAの改革

2015/2/11付
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 日本は戦後、政府開発援助(ODA)を活用し、途上国の貧困対策に力を注いできた。新興国が台頭し、中国などが援助する側に転じるなか、ODAも曲がり角を迎えている。

 政府は対外支援の原則をうたったODA大綱を約11年ぶりに見直し、名称を開発協力大綱に改めた。援助の主眼を、貧困撲滅だけでなく、平和の構築や民主主義の普及に広げる路線を示したものだ。

 大規模なテロや災害、組織犯罪などが国境を越えて広がり、途上国の発展にとっても深刻な火種になっている。こうした国際環境の現実を考えると、改定の方向性は妥当といえるだろう。

 大きな変更点のひとつが、軍事使用や紛争助長を避ける原則を堅持する一方で、非軍事目的であれば、軍へのODA供与も一部、認める方針を明記したことだ。従来の大綱も軍への支援を一律に禁じていたわけではないが、運用上、ほとんど許可してこなかった。

 この制約を緩めるひとつの理由は、途上国で大災害などが起きた場合、緊急支援やインフラ復旧で、軍が重要な役割を果たす例が少なくないことだ。海上の警備やテロ対策なども同様だ。

 南シナ海や東シナ海で強気な行動に出ている中国をにらみ、東南アジア諸国などの海上警備力を底上げし、海洋の安定につなげる狙いもあるだろう。

 途上国の発展にとって、沿岸や国内の安定は欠かせない。その意味で、相手国の治安や安全の確保のためにもODAを使っていこうという新大綱の趣旨は理解できる。ただ、懸念も残る。

 海上警備のために日本が供与した巡視艇が戦闘用に使われたり、災害対策用に提供した物資が軍用に回されたりする危険は、ぬぐいきれない。そうした事態を防ぐため、転用禁止の誓約を相手国から取り付けるとともに、事後の検証もきちんとできるようにしなければならない。

 かつて世界一だった日本のODA予算は、1997年度をピークに半減した。財政難から当面、大幅な増額は望めない以上、援助の効率を高める工夫が一層、大切になってくる。

 新大綱で、企業や非政府組織(NGO)など、民間との連携を深める方針が盛り込まれたのも、そんな事情からだ。援助の効率と効果を高めるためにも、官民の協力を強めてもらいたい。

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