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報道用ドローンが飛ぶ日 プライバシー対策課題

藤村厚夫・スマートニュース執行役員

毎年1月に米ラスベガスで開かれる家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」。その年の消費者向けデジタル家電の動向を占うにはかっこうの催しだ。今年は注目株の一つとして小型のドローン(無人飛行機)が割り込んできた。出展数が多く実演の要望も強く、特別コーナーが設けられたほどだ。

米アマゾン・ドット・コムで「ドローン」と検索すれば、数千円から数十万円までと多種多様な製品が並ぶ。無線操縦して地上の様子を写して楽しむ趣味的な需要から火がついた。最近ではアマゾンのほか流通大手フェデックス、UPS、DHLなどがこぞってドローンによる新たな小荷物運搬手法の開発に取り組んでおり、今後の実用化が見込まれている。もちろん、さらに多様な利用法が生み出されるだろう。

そんな中で筆者は、2015年こそがジャーナリズムによるドローン活用が始まる「ドローンジャーナリズム元年」になるだろうとみている。その理由を整理したい。

まず機能面。ジャーナリズムに「正確な目」は不可欠だが、ドローンの高級機種には高精細な4Kや高品位(HD)カメラを搭載するなど進化している。高精細カメラの搭載が進むと、カメラの振動を抑制して画像を安定させる機能「ジンバル」も採用され、大画面で見るに耐える美しい空撮が可能になってきた。

全地球測位システム(GPS)を活用して指定した経路をたどって目的地へ到達する事前の航路指定も可能になった。驚くのは、特定の人物を上空から追尾するなどの機能を備えた機種まで誕生していることだ。

一方で、ドローンジャーナリズム実現に欠かせない課題もある。それは空中での接触事故や墜落事故や、プライバシーの侵害、さらには治安上の課題などへの対策だ。ポケットに入れて持ち運べて望むタイミングで空中撮影ができる超小型機種の誕生は、スマホでの自分撮り、つまり「セルフィー」の延長線で普及する見込みが高い。混雑した空中での事故を未然に防ぐ必要が高まるのはいうまでもない。これらの課題克服に向けた動きが具体化してきたことが、今年が元年になるとみる理由でもある。

その象徴的な動きとして、米大手放送ネットワークCNNが1月、米連邦航空局(FAA)と報道分野でのドローン利用について協定を結んだと報じられたことが挙げられる。同時期にニューヨーク・タイムズをはじめとする米大手メディア10社が、ドローン利用に関してバージニア工科大学と提携したことも発表された。

まずは立場の強いメディアが連合して自主規制の枠組みをつくっておかなければ、厳しい規制を課されかねないとの思惑もある。事実、航空会社のパイロットらがつくる組合からは、ドローン対策を強く望む声があがっている。治安面でも1月26日に、米ホワイトハウス内の敷地にドローンが墜落して大騒ぎになったたばかりだ。

ドローンが未来の報道を担う可能性も見えてきた。それはVR(仮想現実)との融合だ。これまでジャーナリストさえ接近がかなわなかった地域や事件現場を、高度な撮影機能と連携したヘッドマウントディスプレー(HMD)などを使って眺めて、自由に行動できるようになるからだ。

ドローンがジャーナリストのロボットとして、リアルな現場へと踏み込む。今年はそのような年になりそうな気配だ。

〔日経MJ2015年2月8日付〕

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