2019年2月18日(月)

春秋

2015/1/27付
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古代ギリシャの都市国家アテネは、スパルタとのペロポネソス戦争のさなか、疫病に襲われた。農地も荒れて、戦争続行への不満が広がり始める。そのとき指導者ペリクレスは民会で市民に呼びかけた。歴史家トゥキュディデスが「戦史」(久保正彰訳)に書いている。

▼「諸君の義務は、現在耐えるべからざるを耐え忍べば、すなわちこれ青史に残る栄光たるべしと先見の明をひらき、ふたたび勇猛心をあらたにして、現在と未来をかちとることだ」。スパルタへの勝利こそアテネ繁栄の道。災禍にも心乱さず、開戦時の決意をひるがえしてはならぬ。聴衆を前に一歩も引かなかったという。

▼彼に対する史家の評価は高い。「民衆の意向に従うよりもおのれの指針をもって民衆を導くことをつねとした」。つまり、人に媚(こ)びない。それはいまも、求められるリーダー像だ。ギリシャの議会選で、反緊縮財政を掲げる最大野党の急進左派連合が勝利した。民意に迎合しすぎて財政再建路線が空中分解しないよう願う。

▼チプラス党首は低所得者への電力の無料供給など、バラマキともいえる選挙公約で有権者の支持を伸ばした。緊縮財政が国民生活に及ぼす影響を和らげる必要はあるとしても、行き過ぎてギリシャ危機が再燃すれば困るのは国民自身だ。嫌がられることでも言う勇気と見識が指導者にあるか。この国の歴史は格好の教材だ。

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