2019年9月17日(火)

生産の国内回帰を一過性で終わらせるな

2015/1/20付
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円安の長期化などを受けて、日本企業の生産の国内回帰の動きが広がっている。キヤノンはカメラやプリンターの国内生産の比重を増やし、2年後をメドに現在4割の国内比率を5割超まで引き上げる方針だ。パナソニックやダイキン工業も中国で生産する一部家電の国内移管を進めつつある。

自動車業界でも、日産自動車は最近の為替レートを勘案すれば国内生産のほうが有利とみて、日本からの輸出を増やす考えだ。自動車部品メーカーの間にもそれに追随する動きがある。

一度は海外に出た生産活動が日本国内に戻ってくることを基本的には歓迎したい。

新たな雇用の機会が生まれ、地域経済や関連する中小企業が潤うだけではない。製造業の労働生産性はサービス業などと比べてかなり高く、経済に占める製造業の比重が上がれば、日本の成長力が底上げされる可能性もある。

ただ、今の生産回帰の動きは緒に就いたばかりだ。既存工場の生産量を増やして対応するケースが多く、工場新設にまで踏み込む例は少ない。円安頼みの国内回帰にとどまれば、為替が反転したとたんに、次は空洞化が進むことにもなりかねない。

その点で参考になりそうなのが、米国の例だ。日本より一足早く経済のサービス化や脱製造業化が進んだ米国だが、最近は製造業復活のきざしもある。欧州の電機会社や日本の自動車会社など外資を含めて次々に新設工場が立ち上がり、米製造業は昨年1年間で約20万人の新規雇用を創出した。

背景にあるのが立地競争力の向上だ。中国をはじめとする新興国の賃金の上昇で米国との労務コスト差が縮まり、シェール革命によってエネルギーコストも低減した。ほかにも柔軟な労働市場や成長性が見込める消費市場、IT(情報技術)人材の集積など、内外の企業にとって米国に投資したくなる魅力に事欠かない。

日本も海外企業の呼び込みも含めて、立地競争力の向上に乗り出すときだ。政府は法人税率の引き下げや規制緩和、労働市場の流動化促進などで企業がビジネスしやすい環境を整える必要がある。高い技術力をもった人材を生み出す教育機関の役割も重要だ。

グローバル企業は地球儀を眺めながら「どの国が最適立地か」を決める時代である。選ばれる国になるための努力が欠かせない。

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