2019年4月24日(水)

デュアル・ブランド戦略 矢作敏行編著 NB・PB共存に探る流通の未来

2015/1/21付
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小売・卸売業者が企画し、独自のブランドで販売するプライベート・ブランド(PB)は食品から衣料品まで幅広く浸透してきた。セブンプレミアムなど高品質なPBの登場でPBに対する「安かろう、悪かろう」というイメージも払拭されつつある。一方、消費財メーカーは自社開発商品のナショナル・ブランド(NB)とPB製造の両方に関わる。流通業者、メーカー双方にとってNBとPBの最適なバランスが最大の課題だ。本書はNBとPBが競い合い、かつ共存する「デュアル・ブランド戦略」の可能性を様々な視点から分析・考察している。

(有斐閣・3300円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(有斐閣・3300円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

本書の特徴は3つある。まず、PB商品開発の歴史的な発展過程が欧米との比較で描かれている。「良品廉価な商品の安定調達」による価格訴求型が中心だったPBが、小売り競争の激化によって品質重視型に変化していく過程は各国共通とされる。一方、PBの推進役は欧米ではスーパーであるのに対し、日本ではコンビニエンスストアであるなど、業態革新の違いが各国のPB開発戦略の違いに影響している点は興味深い。

もうひとつは、PBに関する著書の多くが流通側の視点で描かれているのに対し、本書では流通とメーカー双方の視点が盛り込まれている点にあり、デュアル・ブランド戦略をそれぞれの立場から立体的に理解できる。本書では加工食品、菓子から日配食品、総菜まで様々な食品メーカーの事例を調査している。メーカーによって、販売チャネル、NBとPBの事業戦略パターン、採算性などに違いがあるが、ブランド戦略の成否を分けるのは製品開発力とそれに関連したブランド力の程度との指摘は腹に落ちる。

3つめの特徴は研究アプローチの豊富さ。聞き取り調査から2次データ分析、歴史、文献レビューまで実に幅広いアプローチを採用し、NBとPBの新たな共存可能性を理論と実証の両面から多角的に捉えている。

差異化できない製品はコモディティ化する。この現象はわが国では、ものづくりの現場に訪れ、人口減と業態間競争の激化により、小売・流通業界にも同様の波が押し寄せている。節約志向とこだわり志向が同居する消費者に対し、他社にはないバリューを創造できるかが明暗を分ける時代となっている。こうした危機感を小売りとメーカーが共有し、新たな価値創造の可能性を探る中で生まれたのがデュアル・ブランド戦略と位置付けられる。流通業界の新たな未来が透けてみえる一冊である。

(日本リサーチ総合研究所主任研究員 藤原 裕之)

[日本経済新聞朝刊2015年1月18日付]

デュアル・ブランド戦略 -- NB and/or PB

著者:矢作敏行編著
出版:有斐閣
価格:3,564円(税込み)

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