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通訳日記 矢野大輔著

ザックの分身が見た裏側

(文芸春秋・1500円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

塹壕(ざんごう)の中を語るな。

井伏鱒二がそう書いている。「あれは森鴎外の言葉です」(『井伏鱒二対談集』)。出典の起源はともかく、常に戦士の戒めである。

サッカーの日本代表がワールドカップで敗退した。仮に、ザッケローニ監督の補佐役のコーチが「実はこんな失敗がありました」と内情を明かしたらアンフェアだ。自身も選手選考や戦法策定の当事者なのだから。

ファンは裏に何があったのか知りたい。ぎりぎり塹壕を語って許されるのは誰か。監督の通訳。究極のインサイダーであり、ザッケローニの分身とも解釈できる。ただし物事を決める立場にはなかった。そのノート19冊分の日記が本書である。

個の主張を前提とするイタリアからやってきた監督はグラウンド上の決め事が個性をそぐとは考えない。だが日常に薄っすらと自己抑制を強いられる日本の選手は敏感に反応してしまう。そうした文化の差異を背景としながら協調と野心のからまる赤裸々な人間集団はゴールをめざす。悪人は皆無なのに微妙に航路がそれたのはなぜか。省みる敗因はページの細部、さりげない日常の流れにきっと隠れている。

★★★★

(スポーツライター 藤島大)

[日本経済新聞夕刊2015年1月7日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

通訳日記 ザックジャパン1397日の記録 (Sports Graphic Number PLUS)

著者:矢野大輔
出版:文藝春秋
価格:1,620円(税込み)

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