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外国人の受け入れへ一段の工夫を

民が拓くニッポン

人口減や少子高齢化が進む中で社会の活力を維持するためには、もっと海外から人に来てもらうことも大事になる。観光、留学、就職などで外国人の力を取り込むためには、企業など民のアイデアや行動力が欠かせない。国や自治体は民の創意工夫を妨げないよう、過剰な規制を緩和すべきだ。

古民家宿に規制の壁

日本の古都や農村に、古民家を改装した宿が増えている。ベンチャー企業などが経営しており、日本ファンの外国人客に好評だ。景観保存にもなる。しかし今後の発展には規制の壁がある。

旅館業法では、玄関に帳場を設け出入りを管理しなければならない。避難階段やトイレの増設が要ることもある。旅館ではなく短期賃貸の部屋として客を受け入れている物件も多いが、これだと旅行会社が予約を扱いにくい。

国は「古民家特区」を作り、ごく一部の特別に認めた物件は受付が別の建物でもいいことにした。こうした規制は、治安などに問題のない限り、特区だけでなく広い地域で緩めてはどうか。

政府は2020年に年間2000万人の外国人を受け入れることを目標にしており、宿泊や移動手段の不足が予想されている。秋の京都や雪祭りの札幌などに客が集中する現象がすでに起きている。

運行できる地域が限定されたバス免許の仕組みなどを見直し、旅行会社がもっと自由に事業を展開できるようにしてはどうか。地方空港の活用も進めたい。東南アジアには、あえて着陸料を減免し、航空会社に便数増を促し、集客につなげている空港もある。

個人客は持参した携帯端末をネットに接続して旅をする。そのための無料Wi-Fiの整備も待ったなしだ。地方ホテルでは、無線ネット接続サービスがないからと国際会議などの誘致に失敗する事例もある。もったいない話だ。

外国人留学生も増やし、"未来の日本ファン"を育てたい。特に力を入れたいのは、日本人学生でも苦しむ就職活動への支援だ。

国内の大学で学んでいる外国人は約14万人で、受け入れ数では世界7位にとどまる。世界共通語ともいえる英語で学べる米英豪より少ないのは仕方ないが、20万人を超えるフランスやドイツなどと比べても見劣りする。日本の大学は設備面ではひけをとらない。もっと多く受け入れられるはずだ。

新興国には、日本の優れた科学技術や公共サービスなどを学び、自国の経済発展に貢献したいと考える学生がなお多い。先進国からも、アニメなど日本の文化に憧れ、卒業後もとどまりたいと考えて来日する学生がいる。国内初のマンガ学部を創設した京都精華大学も留学生集めに力を入れている。

留学生を増やすため重要なのは、学生のさまざまな動機や目的をくみ取り、日本での経験を進路選択にも生かせるように、きめ細かな支援体制をつくることだ。

静岡大学は15年秋から、東南アジアから約80人の理工系学生を学費免除で受け入れる。スズキやヤマハ発動機などと連携し、学生を工場に派遣する研修も組み合わせる。地元企業の多くが海外で現地生産しており、卒業後も就職先を見つけやすいとしている。

留学生の就活を支援

一橋大学では13年、外国人留学生の就職活動を日本人卒業生がボランティアで手助けする試みが始まった。社会常識や年長者との会話でのマナーなどを教えるという。能力が高く、日本企業に就職を希望しているのに、就職活動がうまくいかず帰国する留学生を減らすためだ。

安倍政権は20年までに留学生を30万人に倍増する目標を掲げ、文部科学省はその拠点として東大など有力大37校を「スーパーグローバル大学」に選んだ。各大学では英語での講義を増やしたり、外国人寮を整備したりする。

だが数さえ増やせばよいというものではない。何のために留学生を受け入れ、卒業後に何を期待するのか。地域の実情も踏まえて、特色のある戦略を競い合ってほしい。受け入れ側が自身の魅力や強みを自己分析し、海外に的確に情報発信することが大事だ。

観光、留学、就職などで日本とかかわりを持つ人たちは、買い物などでお金を落としてくれるだけではない。長い目で見て、それぞれの国や地域と日本の懸け橋になる存在だ。大切に育てたい。

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