STAP問題の真相なお遠く - 日本経済新聞
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STAP問題の真相なお遠く

万能細胞の一種とされるSTAP細胞について、理化学研究所は同細胞をつくったと主張する小保方晴子氏自身による検証結果を公表した。論文とほぼ同じ方法で45回以上試したが、STAP細胞はできなかった。理研の別のチームの実験でも再現できなかった。

小保方氏らの方法ではSTAP細胞ができないことが、ほぼ裏づけられたといえる。だが、なぜ不正が起きたのか、核心はなおはっきりしない。日本の科学が失った信頼を取り戻すため、理研は徹底的に真相を究明すべきだ。

そもそも、小保方氏による検証実験の意義自体に疑問がある。科学の発見は、第三者が同じ方法で試して初めて真理と認められる。STAP細胞でも世界の研究者が再現に挑んでいるが、いまのところ成功の報告はない。

仮に小保方氏がSTAP細胞を再現できたとしても、科学者は信用しないだろう。半面、今回のように再現できなくても、STAP細胞がないと証明できるわけでもない。この実験をもって幕引きにするのであれば、世界の科学界から失笑を買いかねない。

日本学術会議は「(STAP問題は)研究全体が虚構だった疑念がある」と指摘した。そうした根本的な疑問に、理研は答える必要がある。だが実際には、調査する範囲を画像の改ざんなどに限り、小保方氏らの論文不正を認定したにとどまっている。

問われているのは理研の研究管理体制やガバナンス(統治)のあり方だ。研究計画や進捗状況のチェックは適切だったのか。不正をなぜ見逃したのか。

理研は来年3月までの予定だった検証実験を打ち切ることを決め、小保方氏も理研を退職する。STAP細胞の有無を調べても真相究明に直結するわけではなく、実験打ち切りは妥当だろう。

むしろ、組織のあり方の検証と関係者の責任の究明、再発防止策の確立に力を傾けなければならない。小保方氏も公の場に出て説明し、理研の調査に協力すべきだ。

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