/

春秋

7日に亡くなった根本二郎・元日本郵船社長は財界労務部といわれた日経連の会長時代に慌てたことがある。1996年1月、日本の生産性の低迷を考えベースアップ(ベア)の見送りを表明した。ところが豊田章一郎・トヨタ自動車会長(当時)らが反発したからだ。

▼「賃上げする企業があれば止められない」と豊田氏。自社の業績回復が背景にあった。そんな声を聞いた根本氏は、個別企業は支払い能力をもとに判断することになるとの談話を出すなど対応に追われた。結局、その年の賃上げは消費を冷やすのを嫌った自動車や電機各社が前年を上回る額で決着。鉄鋼はベアが復活した。

▼こうした例からもわかるように賃金交渉は、経済界として方針を掲げても結果は企業によってバラツキが出る。会社の体力が違うためだ。来春の交渉はどうなるだろう。賃金を抑え込もうとした根本氏とは逆に、日経連を統合した経団連はアベノミクスを応援するため増額を呼びかける。会員企業は応じてくれるだろうか。

▼心配なのは政府の要請でもあるからと無理をして賃上げした場合に、労働組合や社員に会社の真の実力が誤って伝わることだ。「うちは結構もうかってるじゃないか」と勘違いされるリスクはないか。翌年の賃金交渉の議論がかみ合わなくなる恐れもある。春の労使交渉は始まってから来年で丸60年。節目に危うさも漂う。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン