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春秋

「忍」――。民主党の海江田万里さんは経済産業大臣を務めていたとき、手のひらにこの1字をしたためて国会審議に臨んだことがあった。東日本大震災のあと、原発政策をめぐり菅直人首相との確執が表面化していたころである。じっと我慢の心境ではあっただろう。

▼やがて下野した党の代表に就いてからも、ひたすら「忍」の日々だったに違いない。しかしただ耐えてみせるばかりで、巨大与党と渡り合う迫力はついぞ感じさせなかった人である。やはりといっては失礼か、衆院選で比例復活もならず代表辞任を表明した。野党第1党の党首落選は片山哲・社会党委員長以来65年ぶりだ。

▼海江田さんが人気者だった時代もある。タレント経済評論家として知られ、「とにかく速く自分のお金が二倍になる本」といった利殖ガイドなど物していた。リーダーの器かどうか首をかしげるのだが、この党の幹部らは惨敗を喫した組織のかじ取りをババ抜きみたいに押しつけたのだから罪が深い。非は全体にあるのだ。

▼そんな民主党に、けれど有権者はいくらかの議席上積みを果たさせた。安倍自民の1強支配に抗する勢力の必要性を考え、過去のさまざまな失敗にも目をつむって投じられた票も少なくなかっただろう。投票用紙に「忍」の1字が透けるというものである。その重み、その苦渋を知って本当の再出発を期さないと次はない。

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