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春秋

半世紀も前だが、正面に少女を描いた明治の粉ミルクの缶があった。絵の少女は同じ缶を手にしていて、その缶にも少女が描いてある。その少女も缶を持ち、そこに少女が……。ずっと続いていく絵柄を自ら政治に向き合う姿に重ねていたのが作家の井上ひさしである。

▼「ぼくもいまは左ふうのことを言っているんですが、左が世の中をとったときに、やっぱりそれにも反対するだろうと思うんですね」。ある対談でそう語っていた。応援する勢力が勝ったらまた違う方に回ってもの申す。それがとめどなく続いていくイメージだという。批判し、疑うことをやめない精神、といえばいいか。

▼民主主義とは? 難問である。著名な日本研究者で駐日米大使もつとめたエドウィン・ライシャワーは「一般国民による政府の統制をできるだけ平等かつじゅうぶんに許す政治制度」と定義した。その通りだが、この衆院選の投票率は過去最低だという。国民による統制はじゅうぶんには働かなかった。そういうよりない。

▼「いまなら勝てるから」と師走選挙に踏み切った安倍政権も、政権に思うがままを許した野党も、「棄権」という名の権利を謳歌した有権者も、民主主義には責任がある。しかし、国民が政府を統制する機会は選挙以外にもあろう。そのために井上ひさし流である。「とめどなく批判し、疑うことをやめない精神」である。

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