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「多弱」による勝利に慢心は許されぬ

第47回衆院選は自民、公明両党が320を上回る議席を獲得、引き続き定数の3分の2を超えて、与党で圧倒的な勢力を確保することになった。

野党では民主党が議席をやや回復、共産党が躍進したものの、自民党1強と野党多弱の構図には変化のない選挙に終わった。

24日召集の特別国会で安倍晋三自民党総裁が第97代首相に選出され、第3次安倍内閣が発足する。

最低投票率深刻な事態

投票率は過去最低だった前回2012年の59.32%を大幅に下回り、選挙そのものに有権者からの疑問符が突きつけられた格好だ。深刻な事態である。野党のあり方を含めて日本政治の問い直しが迫られている。

与党の勝因の第1は、4年の衆院任期の折り返し地点にも達しない段階での抜き打ち的な解散で野党の選挙準備ができていなかったことがあげられる。

共産党を別にして野党側は候補者の擁立や、競合する候補者の調整など不十分なまま選挙戦に突入、安倍首相の解散戦略が的中したかたちだ。

第2に反自民の受け皿がなかったことがある。野党第1党の民主党については政権を担当した3年3カ月の統治の混乱ぶりへの有権者の怒りがなお収まっておらず、自民党に代わって政権を任せようとの信頼回復には至っていない。

前回の衆院選では比例票が民主党を上回り第2党になった日本維新の会や、みんなの党といった第三極に関しても、この間の党の分裂・解党劇などを通じて有権者の支持をつなぎとめることができなかった。

与党の勝利は自らの実力というより、むしろ野党の敵失によるところが大きい。

選挙戦術で巧みだったのは、解散の大義名分だった消費再増税の延期には各党間で大きな差異がないのを踏まえ、争点をアベノミクスにしぼり込んだことだ。これが第3の勝因である。

政治的な考え方の違いで対立が際立つ集団的自衛権の行使容認などを横に置いた。経済を論争の主要テーマにすえ、対案を示せない野党の攻撃をかわした。

アベノミクスの評価になれば、安倍内閣の2年弱の円安株高で潤った人は「業績評価」で与党に投票する。まだ利益を得ていない人にもこの先の可能性を訴え「将来期待」で投票を促す。その作戦が功を奏した。

アベノミクス選挙と規定し、それに勝利したわけで、確かにアベノミクスを進めることへの信任は得たといえるだろう。しかし忘れてはならないのは、野党が体をなしていない中での選挙だったということだ。

棄権した有権者の中には自民党に批判票を投じようにも、適当な政党や候補者がいなかった向きがあるに違いない。

安倍自民党は決してこの勝利におごってはならない。アベノミクスへの将来期待はそれが実績となり有権者にもたらされてはじめて評価されることを肝に銘じておく必要がある。

もしどこまでいっても期待だけなら、それは必ずや失望に変わる。裏切られたとの有権者の思いを、依然として、ぬぐい去れずに苦しんでいる民主党と同じような展開にならないという保証はどこにもない。

成長戦略実現に注力を

それにはドリルで岩盤をくりぬき、政官業の抵抗勢力を押さえ込みながら、まずは成長戦略を実現、経済の好循環につなげていかなければならない。衆院での圧倒的多数という政治資源はそのためにつかうべきだ。

まちがっても多数の横暴などといわれないようにしなければならない。弱体野党の国会でも十分な手順を踏んで合意形成をめざしていく必要がある。

派閥が壊れてしまい自民党は以前のような派閥の連合体ではなく、議員の集合体になっている。政策決定は首相官邸主導で進み、党は事実上、追認機関にもなっている。利益の分配ができなくなり、イデオロギー的な色合いも強まっている。新たな党のあり方も検討してもらいたい。

野党の出直しは、より切迫している。はたして民主党は今のままで再建できるのだろうか。維新の党も含めリベラル勢力を結集して、自公の対抗軸をつくることを本気で検討すべきだ。

もし16年夏の参院選までに反自民の受け皿ができていなければ、投票率がもっと下がり政党政治そのものが重大な岐路に立つ事態になりかねない。

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