産業と人が育つ宇宙政策を

2014/12/6付
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遠く離れた小惑星の岩石を持ち帰る使命を担い探査機「はやぶさ2」が打ち上げられた。日本中の多くの人を感動させた「はやぶさ」の後継機として往復で約52億キロの旅に出た。

6年後の2020年に目的を果たして地球に無事に帰還できるよう、宇宙航空研究開発機構をはじめ関係者の努力を期待したい。

小惑星探査によって、生命や太陽系の始まりに関する新たな知識が得られるそうだ。科学の発展に貢献するのは大切だ。ただ約300億円を投じる「はやぶさ2」の意義はそれだけではない。

宇宙探査を通じて厚みのある宇宙産業と優れた科学者、技術者を育てる意味がある。

政府の宇宙政策委員会は新しい宇宙基本計画の素案を公表、年内に決定する段取りだ。新計画は安倍晋三首相の指示で現行計画を見直すもので、素案では情報収集衛星をはじめ安全保障を目的とする衛星の打ち上げが前面に出た。

宇宙分野でも日米同盟強化の機運が高まってきたことが背景にある。不審船の侵入を宇宙から監視する必要性なども指摘される。

日本は長い間、安全保障を目的とした宇宙利用に慎重だった。宇宙からの領海監視などは海外では当然であり、宇宙の平和的な利用の原則に背くものではない。

安全保障への傾斜が「はやぶさ2」に代表される宇宙科学への予算を圧迫するとの懸念もある。そこは二者択一の議論に陥ってはいけないだろう。宇宙の開発・利用が日本の将来にとり重要であるなら、全体として投資を増やす道を探すことが大事だ。

科学であれ安全保障であれ今の宇宙開発は官需依存だ。問題は政府予算が産業や人材の育成に効果的に生かされているか。世界を舞台に競争力のある産業づくりにつながっているか、どうかだ。

欧米は民間の事業意欲を喚起し宇宙への投資拡大を促している。企業も科学者も官需だけに依存していては産業や科学を長く持続できないと肝に銘じてほしい。

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