持続可能な社会保障へ改革案示せ

2014/12/1付
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安倍晋三首相は来年10月に予定していた消費税率引き上げの延期を表明し、衆院を解散した。増税は年金や医療、介護、少子化対策など社会保障の財源を確保するためだった。それが先送りとなった今、制度をどうやって持続可能なものにしていくのか、改めて考えるときである。

「痛み」は避けられぬ

少子高齢化が急速に進む中で社会保障費は膨らみ続けている。わたしたちはその財源を確保する一方で、制度の効率化を進め、できる限り費用を抑えていくことが必要だと主張してきた。どちらも国民に「痛み」を強いるいばらの道だが、制度を将来も持続していくためには避けては通れない。

ところが各党の選挙公約を見ると、「痛み」に向き合うことを避けていることが多い。消費税増税については与野党すべてが延期や凍結をうたっている。景気に配慮することは必要だ。しかし、社会保障の財源をどう工面するのかについて現実的な答を用意しなければ責任ある態度とは言えまい。

社会保障制度から国民に給付している金額は年に110兆円を超える。この6割ほどを年金や健康保険などの社会保険料で、4割ほどを国や地方が投入する税金で賄っている。

特に問題は税金の部分だ。周知の通り国も地方自治体も借金まみれで、今の税収のままでは社会保障の費用も到底賄えない。借金ばかりがさらにかさんでいく。

確かに景気が上向けば税収は増えるだろう。しかし必要な財源はその程度で収まる額ではない。さらに言えば、消費税を10%に引き上げたとしても、国や地方が社会保障に費やす費用のすべてを賄うことはできない。本来ならば10%の先も見据えた議論が必要だ。

そういう状況であるにもかかわらず、与野党の公約には首をかしげざるを得ない項目が並ぶ。自民、公明両党は増税を延期している間についても、子育て支援、医療、介護などの充実を着実に進めるとする。

自民、公明、民主の3党で合意した「社会保障と税の一体改革」では、5%だった消費税率を10%まで上げる際、4%分は現行の社会保障制度の財源に充て、1%分を少子化対策や低所得の人への年金額加算など制度の充実に充てる計画だった。

当初予定していたよりも税収が上振れする見通しであることから、その分で少子化対策などを充実させる手はあるだろう。しかし増税を延期した分については、制度の拡充も延期するのが筋ではないだろうか。

各党は際限なく膨らむ社会保障の費用をどう効率化していくかについて、もっと議論すべきだ。医療、介護に関しては、重装備の病院や介護施設で多くの高齢者の療養を担っていてはコストがかかり過ぎる。住み慣れた自宅などで過ごしてもらうにはどうすればよいか具体策を競ってほしい。

年金についても、徐々に給付水準を切り下げていかざるを得ないことをきちんと説明すべきだ。

世代間格差の是正必要

社会保障制度でカバーする範囲の見直しも必要だ。広く国民に十分なサービスを給付するのではなく、本当に必要な人に重点的に給付する形が重要である。

現役世代が高齢世代を支えるという制度の仕組みも部分的に変えざるを得ない。現状では現役世代の負担ばかりが重いとの不満は強い。所得や資産が多い高齢者に今よりも負担をしてもらい、高齢世代の中で支え合うという施策を議論すべきだ。

主に現役世代が負担する社会保険料も引き上げには限界がある。消費税は高齢者も含め各世代が負担するという点で世代間格差の是正に役立つことも再認識したい。

給付の効率化や世代間の負担の公平性を確保したうえで、これならば持続可能という制度の姿を示すことは日本経済にとっても望ましい。制度への不信が高まるばかりでは、国民が病気や失業、加齢などのリスクに備えてお金をため込むばかりになりかねない。

社会保障制度は国民一人ひとりにかかわる大切な仕組みだ。財源をどう負担するか、どんなときに給付が受けられるかについて無関心ではいられない。選挙戦を通して、どの政治家が責任ある対応をしようとしているのか、しっかり見極めたい。

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