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アベノミクスに通信簿つける選挙

安倍晋三首相が21日に衆院解散・総選挙に踏み切る意向を表明した。衆院任期半ばでの異例の解散には賛否両論あるが、せっかく投票の機会が巡ってきたのだから、有効活用しない手はない。この選挙で問うべきは何だろうか。

デフレ脱却のチャンスを手放すわけにはいかない」。首相は日本経済の再建に向けた道筋を確かにするには消費再増税を延期せざるを得ないと説明した。そのうえで「公約の重大な変更であり、国民の信を問う」として衆院解散に値する決断との認識を示した。

難しい途中での評価

結局のところ、安倍政権の経済政策を評価するのかどうかを争点に据えるということだ。今回の解散をどう名付けるかはまだ定まっていないが、「アベノミクス解散」と呼ぶのが一番ふさわしそうだ。

アベノミクスはうまくいっているのか。成否がはっきりしていれば結論を出すのは簡単だ。今回は途中段階での難しい判断になる。選挙戦での与野党の論戦にしっかり耳を傾けたい。

「アベノミクスに任せれば大丈夫」の一点張りの与党候補。こうすればよいがない野党候補。そんな政治家に国政は任せられない。

首相は消費税の10%への引き上げを2017年4月まで延期しても、財政健全化目標は堅持すると明言したが、実現可能なのか。1年半延期した後には必ず再増税するとの約束は景気が大幅に悪化した場合でも守るのか。知りたいことはたくさんある。原子力を含めエネルギー政策をどうしていくのかも経済再建と密接にかかわる。

ただ、あまりにアベノミクス一点集中型の選挙戦にすると、政治の全体像がみえにくくなる。

2005年の衆院選で当時の小泉純一郎首相は「郵政民営化は是か非か」と叫び、地滑り的勝利を得た。09年には民主党が「いまこそ政権交代」と訴え、有権者をひき付けた。そのたびに与野党の議席は大きく入れ替わった。

ブームに乗って当選した小泉チルドレンや小沢ガールズの多くが目立った働きもないまま次の選挙で淘汰された。こんな愚は繰り返したくない。自分の住む選挙区に名乗りをあげた候補が風目当てなのかどうかはよく見極めたい。

選挙には2つの側面がある。業績評価と将来期待である。難しいプロジェクトをまとめたベテラン社員を役員に起用し、実績はなくともやる気はある若手を課長に引き上げる。それを判断する役割を有権者が担うわけだ。

第2次安倍内閣は政治に安定をもたらした。9月の内閣改造の際に石破茂地方創生相とあつれきがあったとはいえ、ごたごた続きだった民主党政権に比べればまだ平穏だ。民主党がこじらせた日米関係もほぼ修復した。その力量は認めなければならない。

不安材料は「古い自民」が息を吹き返す気配が見え隠れすることだ。政治とカネに絡んで2閣僚が辞めたが、政治資金の透明化に動く気配はない。選挙が始まれば、企業ぐるみ選挙に走る候補がまた出てこないかも心配になる。

業界団体などの既得権益におぶさっていれば楽だろうが、それで岩盤規制を砕けるのかという問題もある。アベノミクスの第三の矢である成長戦略が骨抜きになって困るのは安倍首相自身である。

他の課題にも目配りを

衆院選は向こう4年間の国のかじ取りを託す選挙である。その間に起きるであろうさまざまなことを想定してみよう。安倍首相は今年、集団的自衛権に関する憲法解釈を見直した。政権が続けば、来年の通常国会で自衛隊法など関連法の改正をする方針だ。そのあとにはいよいよ憲法本体の改正を政治日程に載せることになる。

外交・安保にも目配りしたい。日米を基軸とする戦後日本の歩みを否定する主要政党はないだろうが、周辺国とのつき合い方などで政党ごとに立場をやや異にする。

先の大戦などを巡る歴史問題には複雑な経緯があり、簡単に割り切れない。歯切れのよい発言は心地よいが、それが本当に日本の国益につながるのかはよく考えねばならない。

衆院選は政権を賭けた戦いであり、与野党の政策をよく見比べ、よりましを選ぶのが基本である。だが、安倍首相は対決の機がまだ熟さない段階での早期解散を選んだ。となれば今回の選挙は政権選択ではなく、安倍政権への通信簿との性格を帯びざるを得ない。

ここまで述べてきた多くの課題について安倍首相は野党よりも重い説明責任を負うべきだ。「民主党よりまし」などという安易な戦い方は封印してもらいたい。

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