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APECで見えた経済統合の分かれ道

北京で開いたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議など一連の会合で、この地域の経済統合をめぐる各国・地域の同床異夢ぶりが浮き彫りになった。

APEC首脳宣言は自由貿易圏の実現に向けて共同研究を始めると表明したが、共通の認識の下に結束したとは到底いえない。

際だったのは米オバマ政権の指導力の低下である。米主導の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉は大筋合意に至らず、目標期限も示せなかった。安倍晋三首相は「出口が見えてきた」と語ったが、交渉は漂流の瀬戸際をさまよっているのが実態だ。

APEC域内の貿易は部品・材料など中間財の比率が約6割を占める。複雑に進化したバリュー・チェーン(価値の連鎖)の実情に即して、通商ルールを更新する必要がある。20年前にできた世界貿易機関(WTO)協定の不足を補うTPPの意義は、大きい。

自由化にともなう構造改革には国内で政治的コストがかかる。だからこそ政治指導者の強い意志が欠かせない。残念ながら、米中間選挙で敗北したオバマ政権には難しい交渉をまとめ上げる決意と力強さが感じられない。

対照的に、習近平国家主席ひきいる中国の存在感は高まった印象だ。中国が自らの潤沢な資金力を背景に唱えたアジアインフラ投資銀行(AIIB)構想は、新興国から支持を得た。

一方で中国は、TPPのような高い水準の自由化には慎重で、緩い連携を目指している。APECの21カ国・地域すべてを含むアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の早期実現を主張し、首脳宣言にも文言が盛り込まれた。

環太平洋で広域の経済統合を目指す方向は間違ってはいないが、言葉だけでは成長力を高められない。非効率な制度や規制を変えていくには、痛みをともなう国内改革を避けて通れない。

経済統合は入り口が違えば仕上がりの姿も異なるものになる。中国主導の連携の流れと米政権の弱体化によって、支援に頼るムードが台頭し自由化と改革に挑む機運が薄れないか、心配だ。

この現実にどう向き合っていくか。日本が果たすべき役割は大きい。米国との間の懸案を早く片づけてTPPを妥結に導く責任がある。時間がたてばたつほど、世界の自由化への熱は冷めていくと肝に銘じるべきだ。

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