壁崩壊25年「欧州の盟主」ドイツの重い責務

2014/11/9付
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東西冷戦の象徴だったベルリンの壁が崩れてから、きょうで25年になる。再統一後のドイツは長く経済の低迷に苦しんだが、構造改革を進めて高失業などを克服し、経済大国として復活した。

いまや実質的な「欧州の盟主」といえる。統合欧州の中で、盟主の立場にふさわしい積極的な貢献が求められている。

再統一の後、旧東独への経済支援は財政の疲弊を招いた。物価の上昇で生産性と国際競争力が低下し、貿易などで稼ぐ力を示す経常収支も赤字が続いた。

高い賃金など構造的な問題が深刻で、一時は失業者数が480万を記録した。2ケタの失業率が常態化し、雇用を生み出せない「ドイツ病」とも言われた。

転機となったのは1999年の単一通貨ユーロの導入だ。為替変動リスクが下がってユーロ圏への輸出が拡大し、2002年に経常収支は黒字に転換した。

さらに労働市場と税・社会保障制度の一体改革を進め、労働コストを抑えられる環境を整えたことで、価格競争力も向上した。

体質改善したドイツ経済はユーロ圏の債務危機に際しても強さを発揮した。ギリシャやスペインなど南欧の債務国が高失業の下で緊縮財政を強いられる一方、ドイツは経常黒字を増やした。「一人勝ち」ともいえる状態だ。

国内では東西の経済格差がなお残るが、失業者数は200万人台に減り、失業率は5%台。経常黒字は2000億ユーロ(約28兆円)を超える。経済力を背景に国際的な発言力も高まり、「大ドイツ」の存在感は一段と大きくなった。

ユーロの導入や欧州連合(EU)の拡大・深化を引っ張ってきた「独仏枢軸」は今、見る影もない。仏経済は高失業や財政赤字で精彩を欠いたままだ。

ところが、勝ち組のおごりなのか、ドイツは国益を優先して欧州への貢献を避ける姿勢が目立つようになっている。

デフレ回避策をめぐって景気対策を求める仏伊と消極的なドイツが対立し、国際的なあつれきも生んでいる。ユーロ圏のデフレ阻止に失敗すれば、世界経済にも深刻な打撃となりかねない。

再統一後、政治家はよく作家トーマス・マンの言葉を引いて新生の理想を語った。「ドイツの欧州ではなく、欧州のドイツで生きていきたい」。当時を思い出し、重い盟主の責務を果たしてほしい。

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