2019年3月26日(火)

春秋

2014/11/5付
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古代ギリシャの医師ヒポクラテスが職業倫理を述べた「誓い」のなかに、安楽死にかかわる一節がある。いわく「医師は何人に請われるとも致死薬を与えず。またかかる指導をせず」。時を超えて、いまでも医療に携わる人々が最高の行動規範とする誓文の言葉は重い。

▼とはいえヒポクラテスが生きた時代から、安楽死の是非は医学や哲学の「解」なきテーマであり続けてきた。死が確実に迫り、耐えがたい苦痛を訴える患者を前に医師が手を下すことは許されないのか? 患者には安らかな死を選び取る自由はないのか? 人々は2000年以上もこの問題に向き合い、なお苦悩している。

▼脳腫瘍で余命わずかと宣告され、自死を予告していた米西部オレゴン州の女性が医師から処方された薬をのんで亡くなった。日本なら医師は自殺ほう助に問われよう。しかしオレゴン州では合法化されて久しく、女性はそれゆえに引っ越してきたという。安楽死を認める州はほかにもあり、欧州ではオランダなども同様だ。

▼ヒポクラテスの教えに背く現実には違いないが、そこには生と死を直視した奥深い議論があったことも疑いない。日本での目下の焦点は今回のようなケースではなく、その手前の、患者の意志に基づき過剰な延命措置を施さない尊厳死の法制化だ。それでも容易に答えを導けぬ難問と、社会はどう格闘したらいいのだろう。

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