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循環型経済、顧客も貢献実感 「再利用」に脚光、新たな価値生む

Earth新潮流 日経ESG編集部 相馬隆宏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Earth新潮流

資源循環を経済成長につなげる「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」の実現に取り組む企業が増えている。その方法として広がりつつあるのがリユース(再利用)だ。持続可能な資源の利用というと、かつては節約や廃棄物問題への対応が主眼だった。近年は消費者自身が貢献を実感できることに加え、利便性や低コストといった付加価値を提供することで顧客の獲得につなげようとしている。

大手メーカーが賛同

ループは再利用容器を使って日用品や食品を販売する

8月31日、再利用による容器を使って日用品や食品を売る「Loop(ループ)」のネット通販サイトが日本で稼働を始めた。大手メーカーの商品を中心にそろえ、第1弾として味の素の調味料や資生堂の化粧品など8社14商品を用意した。

ループは廃棄物問題に取り組む米スタートアップ、テラサイクルと世界の大手メーカーが連携し、2019年5月に開始したサービスだ。米国とフランス、英国、カナダで展開し、日本は5カ国目になる。ネット通販に先行して、5月にはイオンで店頭販売を始めた。米国では開始から1年で販売数量が3倍になるなど好調に推移している。

顧客調査の結果では、容器のデザインや機能を評価する声が多い。ループの容器は何度も繰り返し使える丈夫なつくりにするため、ガラスやステンレスを使い、インテリアにも合うようデザインを工夫している。アイスクリームの容器は時間がたっても溶けにくい構造を採用している。

容器を再利用することで廃棄物を削減できるだけでなく、デザインや機能で既存の商品と差異化することでビジネスを成立させているサーキュラーエコノミーの好例だ。

日本でループを展開するループ・ジャパン(横浜市)のアジア太平洋統括責任者のエリック・カワバタ氏は「モッタイナイの精神がある日本の市場に期待している」と言う。

18年にプラスチックストローの全廃を宣言し、海洋プラスチック問題への関心を高める大きなきっかけをつくった米スターバックスも「脱使い捨て」の一環として容器の再利用に乗り出した。6月、繰り返し使える容器のシェアリングプログラムを、25年までに欧州、中東、アフリカの全3840店舗に導入すると発表した。

日本でも東京・丸の内エリアでカップシェアの実証実験を近く開始する。スターバックスコーヒージャパンは環境への貢献を成長の軸の1つに据える。今後、年間100店舗の新規出店を続け、24年末までに国内の店舗数を現在の1600店から2000店に増やす。

「CO2排出量も半減」

外食産業は新型コロナウイルス禍で厳しい局面が続いているが、同社の水口貴文最高経営責任者(CEO)は「リラックスしたい、人と会いたいというニーズは強まっている」と言う。将来にわたり必要とされるブランドとして成長するために、環境への貢献は欠かせないと判断した。

BtoB(事業者向け)ビジネスで再利用を中核にサーキュラーエコノミーを実践しているのが、ブリヂストンだ。すり減ったタイヤの表面を貼り替えて残りの部材を再利用するリトレッドサービスを展開する。

リトレッドを2回繰り返した場合、新品に毎回買い替える場合と比べて、タイヤ製造時の原材料使用量と二酸化炭素(CO2)排出量を半減できると、同社は試算する。

ブリヂストンは事業者向けにタイヤの再利用サービスを展開する

ブリヂストンは運送事業者向けに、リトレッドサービスをタイヤ交換や空気圧の管理といったメンテナンスサービスと組み合わせたトータルパッケージプランとして提供している。運送事業者が月次の定額料金を支払うサブスクリプションモデルだ。

中小企業が大半を占める運送事業者にとってタイヤ管理に関するキャッシュフローを平準化できるメリットは大きい。ブリヂストンからすれば顧客と継続的な関係を築き安定した収益を確保できる。

ブリヂストンのサーキュラーエコノミーは、タイヤの管理にかかる手間やコストを減らすことで顧客にとっての「価値」を創出している点がポイントといえる。

トータルパッケージプランの契約台数は、07年から21年6月までの累計で約4万8000台に達する。このうちほとんどがリトレッドサービスを利用しているという。ドライバーの不足や高齢化といった問題が顕著になったのもあり、特にここ6~7年は契約台数が大きく伸びている。

早めのスタートがカギ

「リトレッドは社会価値と顧客価値の両立を可能にするサービス」(ブリヂストンタイヤソリューションジャパン生産財商品企画部部長の安藤浩太郎氏)に位置付け、今後も強化する。

サーキュラーエコノミーは「脱炭素」と並ぶ世界の重要課題となっており、日本政府も実現に向けて本格的に動き出した。

経済産業省と環境省は21年1月、「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」を公表した。企業の情報開示や投資家とのエンゲージメント(建設的な対話)を促進するポイントを示し、サーキュラーエコノミーに貢献する企業に投資家の資金が流れるようにするのが狙いだ。

サーキュラーエコノミーの取り組みはすぐに大きな成果を上げられるとは限らない。だが着手が遅れると「あっという間に市場を持っていかれ、その後ではなかなか巻き返せない」(アクセンチュアビジネスコンサルティング本部サステナビリティグループ統括マネジング・ディレクターの海老原城一氏)。早めにスタートすることが競争優位性を築く鍵になる。

[日経産業新聞2021年9月10日付]

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