札幌で飲んだ後のシメはパフェ テークアウトにも対応

山海の幸に恵まれた北海道の中心都市、札幌。この街で生まれた独特の食文化が、酒を飲んだ後のシメにパフェを食べる「シメパフェ」だ。新型コロナウイルスの感染拡大により2次会でシメパフェ店を訪れる客が大きく落ち込むなか、各店は持ち帰りに活路を見いだしている。

札幌市内や東京都などで「ななかま堂」など複数のシメパフェ専門店を経営するGAKU(札幌市)は7月、札幌の歓楽街すすきのにケーキ店「OKASHI GAKU」をオープンした。人気を博しているのが、店頭に設置した自動販売機で売る「スイーツ缶」だ。
透明な素材を用いた缶容器の中に色とりどりのケーキをとじ込めた。使う食材や見せ方はシメパフェから着想を得た。特徴的な見た目がSNS(交流サイト)で話題となり、「自販機1台で1日400個ほどの商品が売れる」(GAKUの浜屋慎二氏)ほどの人気ぶりだ。
価格は容量330ミリリットルの「ショートケーキ缶」で1個1100円。24時間販売のため夜間にシメパフェ代わりに買う人もいるという。オンライン販売を並行し、休業している店舗のスタッフもスイーツ缶作りに取り組むが、浜屋氏は「とにかく人手が足りず、採用活動も強化している。採れるだけ採りたい」と話す。

シメパフェ文化の発信に取り組む札幌パフェ推進委員会によると、札幌では10年以上前から飲み会の後に甘い物を食べる習慣があったという。同委員会の事務局を務めるアリカデザインの小林仁志代表は「シメパフェ店にはカフェメニューもある。2次会にシメパフェを選べば、お酒を飲む人も、飲まない人も一緒に楽しめる」と魅力を語る。
アリカデザインは札幌市中心部の狸小路商店街近くでシメパフェ店「パフェ、珈琲、酒、佐藤」も経営する。同社は8月、新店舗「佐藤堂」を大丸札幌店にオープンした。狸小路で提供しているパフェに加え、持ち帰り向けのスイーツを取り扱う。

狸小路の店舗ではピスタチオのアイスクリームを使ったパフェが1番人気で、年間6万個を売り上げる。ここから着想を得て、ピスタチオのショートケーキやピスタチオのマカロンなどを販売する。
アリカデザインが持ち帰りスイーツの販売に進出するのは今回が初めて。小林代表は「感染対策が進んでいる百貨店でテークアウトにも取り組み、客層を拡大したい」と語る。コロナ下でも、シメパフェ文化は札幌に息づいている。
札幌パフェ推進委員会によると、札幌市では冬の期間のアイスクリーム消費が全国平均を上回っている。寒さが厳しい北海道の建物は気密性が高く、強力な暖房が備わるためむしろ屋内は暖かい。「札幌市民は冬でも半袖でアイスを食べる」といわれるゆえんだ。
総務省によると、札幌市は1年間の酒類向け支出(2019年、2人以上世帯)が全都道府県庁所在地のなかで第3位。シメパフェは酒を愛し、年間を通してアイスを楽しむ札幌だからこそ生まれた食文化だ。
(札幌支社 井田正利)
[日本経済新聞夕刊2021年9月9日付]
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