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五輪の見方を変えたSNSとストリーミング 新たな共感・視聴スタイル生む

先読みウェブワールド (藤村厚夫氏)

NIKKEI MJ

異例ずくめだった東京五輪が幕を閉じた。アスリート、主催者、報道陣、そして約50年ぶりに自国開催を迎えた我々自身と、誰にとっても異例、想定外、数々の制約に見舞われた大会だった。

会場を間違えたが、陸上男子110メートル障害で金メダルを獲得したジャマイカのハンスル・パーチメントのSNSも話題になった

とりわけ、多くの競技が無観客での実施となったことから、報道スタイルはもちろん、観戦スタイルが過去の大会とは大きく異なるものとなったことは間違いない。

誰もが会場に足を運べないとなれば、リモートでそれをどう楽しめるかに力点が移る。新型コロナ禍でコミュニケーションのデジタル化が急ピッチで進むという変化が起きたように、五輪の体験のあり方もまた、未来へと変化を見せる結果ともなったようだ。

その点で、今大会は、アスリートが主役兼発信者となったSNS、なかでもショート動画(TikTokやインスタグラム)の全盛を印象づけるものとなった。競技の前後、選手村などでのオフの姿、そして大会ボランティアとの交流などが多く伝えられた。

競技会場に向かうバスを乗り間違えたジャマイカの選手が、大会関係者(ボランティアとも報道されたが)の機転によって無事に競技に参加でき、金メダルを獲得したという話題は、アスリート自身による動画の投稿が10万件以上の「いいね」を集めた。アスリート自らの投稿がオリンピックの人間的な側面を伝えることになり、競技会場にいない我々に大会への共感を生む効果を発揮したことは間違いない。

観戦を盛り上げたもう一つの要素は、「ライブストリーミング」の浸透だ。実は自国開催ならではの観戦上の「悩み」があった。時差がないことから朝から晩までと、通常の生活時間帯に注目競技が目白押しとなってしまう。今大会では仕事中、移動中などの時間帯にどう競技を楽しめるかというポイントがあった。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

今回、NHKの「NHK+」、民放テレビ局の「gorin.jp」がネット経由で各種競技の動画を配信した。特筆すべきは、ゴルフに代表されるような長時間にわたる競技、あるいは日本選手が出場していない競技での視聴体験の充実だ。仕事のかたわら、スマホで「ながら」視聴できるため、時差なし観戦には朗報だった。

NHKはライブストリーミングに「ロボット実況」機能も追加した。データから自動生成する字幕か、その音声合成による読み上げを選択できる。ユニバーサルサービスの一環だが、仕事や家事など周囲を気にしながら無音で観戦する際にも威力を発揮した。

テレビやライブストリーミングの映像に、さらに任意のライブストリーミングを組み合わせて視聴するという新しいスタイルも体験できた。野球の決勝戦に合わせて、プロ野球の人気解説者がユーチューブでライブを配信した。解説者はテレビを見ながらおしゃべり(解説)するだけだが、これと無音にした公式のテレビ映像と組み合わせると好みの解説者による実況中継に早変わりするというわけだ。

さまざまな制約に見舞われたが、1年以上続くコロナ禍の下で培われた動画、ライブ、オンライン会議などの仕組みが生きて予想以上の楽しみ方が生まれた大会でもあった。五輪体験の未来をかいま見た思いだ。

[日経MJ2021年8月23日付]

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