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顧客の努力を少なくする

SmartTimes ネットイヤーグループ社長 石黒不二代氏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Smart Times

「ロイヤルカスタマーは、貴社の製品を口コミで伝播してくれます」。マーケティング会社が顧客に対してよく言うセリフである。それは正論であるものの、マーケティング会社の私が言うのも何であるが、難易度は高い。にも関わらず、マーケティング会社もその顧客も、そんなことばかりやってきた。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

企業が採用する指標は最近、ますますポジティブ思考へエスカレートしている。顧客満足度からNPS(ネットプロモータースコア=顧客推奨度)に移行している。しかし、これらの指標は製品やブランド、企業自体をザクっと眺めた上での指標で、問題点を解決させるものではない。

これと真逆な形で注目を集めている指標が、CES(カスタマーエフォートスコア)というものだ。顧客がサービスを利用する際に、その利用目的を達成するまでにかかった労力や負担感を数値化したもので、近年米国を中心に浸透してきている。

負担を感じなかった人の「数」が基準となっているため、スコアは高い方が良い。CES65%以下の顧客に比べ、90%以上の顧客の再購入率は1.4倍高いという統計結果もあり、再購入率だけでなくLTV(ライフタイムバリュー)も高いと言われている。

これらCESを高めることが良いとされる理由は、比較的、対処法が明確であるということだ。お客様の努力なしにサービス利用や自己解決ができる状態にすればいいわけで、そのプロセスは、お客様の行動に沿って解決策を探っていくというものだ。

年代にもよるが、顧客がわからないことがあると、まず、ウェブサイトを見て解決を試みる人が多数だ。つまり、ウェブサイトの行動分析をして、閲覧者がつまずいているボトルネックのコンテンツの改修をする。FAQは本当に解決策になっているのか。サイト内検索は適正化されているか、などだ。

ウェブで解決できないと顧客はコールセンターに電話をする。コロナ禍で入電の数は多くなり、つながらない問題は過熱気味だ。ウェブで解決、つまり、顧客が自己解決してくれていれば、入電数は減るはずだ。

問題が解決せず、何度も電話してくるお客様が異なるオペレーターに一から説明する場面に遭遇する。コールログをIDと紐づけておけば、お客様の説明の手間は省ける。マニュアルがわかりにくくて、電話をしてきたお客様のログを集計すれば、マニュアルの改定につながり、結果として入電も減る。

CESの教科書によく出てくるフレーズがある。サービスの利用のために努力をせざるを得なかったお客様の96%がブランドに何らかの嫌悪感をもった。努力したお客様が離れていくという悲しい現実に楔をさす。これが注目の指標、CESの流儀である。

[日経産業新聞2021年8月2日付]

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