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アバターロボットが開く未来 ハンディキャッパーの雇用に革新

奔流eビジネス (D4DR社長 藤元健太郎氏)

NIKKEI MJ

東京・日本橋に先日オープンしたDAWNというカフェはとてもユニークだ。

外からぱっと見た感じはおいしいコーヒーが飲める普通のカフェだが、店内に入るとあらゆるところにロボットがいる。最近増えてきたロボットカフェかと思うが、実はこのロボット(OriHimeという名称)たちの"後ろ"には全て人間がいてメイドとして接客しているのだ。

DAWNではハンディキャッパーがロボットのパイロットとしてはたらいている

筆者が行ったときに受付のところで話しかけてくれたロボットはあーりんさんが操縦していた。あーりんさんは筋痛性脳脊髄炎という難病で普段は車椅子で移動しているが、自宅からオンラインでこのロボットを操縦して接客しているそうだ。

ここのロボットたちはアバターロボットと呼ばれ、遠隔でもロボットを通じてあたかも自分がそこにいるかのように行動できるテレプレゼンスやテレイグジスタンスと呼ばれる技術が使われている。接客は会話だけではない。ロボットがオーダーした飲み物を運んでくれるサービスもある。

ちょうど飲み物をお客様に運んでバックヤードに帰る途中のさえちゃんさんに話しかけてみたところ、顔を動かし手も振ってくれた。さえちゃんさんも身体表現性障害という病気で外出が困難な方らしい。ここではALS(筋萎縮性側索硬化症)などで寝たきりの人などなんと50人のハンディキャッパーがパイロットとして働いている。

移動はできないが眼が光り、会話しながら手だけは動かせるタイプの小さいOriHimeもあちらこちらにいて、話しかけると会話をしてくれる。働きたいが働けない人達がアバターロボットによって社会参加し雇用されていることは、ハンディキャッパーの雇用の考え方に大きな革新を与えるだけでなく、働くということそのものにも新しい概念をもたらすと言えるだろう。

運営しているオリィ研究所では2018年から実験を始め、常設のカフェのオープンにこぎ着けた。今後はカフェ内に準備されている工作機械を改造したバリスタロボットを活用し、お客さんの目の前でパイロットが遠隔で操縦し、コーヒーを淹(い)れるサービスも予定しているそうだ。

ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職

アバターロボット技術には様々な可能性がある。例えば足腰が弱って山登りができなくなった高齢者の代わりにロボットが登山をして、自分が登山を楽しんでいるかのような新しい旅行サービスも実現できるだろう。

ロボットであれば無酸素のエベレスト登頂も余裕かもしれない。山頂からの景色をVR(仮想現実)で見れば自分がその場で眺めているかのような臨場感を体験できる。交代で操縦することもできるので100人の人が自宅で一度にエベレスト登山を体験できる。

資源開発や事故対応などへの応用も期待される。自律型のAIロボットとは違い、リアルタイムで通信が可能なところであれば人間が自ら操縦できるため、人間と機械で補完しあえるところが最大の強みだ。

現在は視聴覚と動きが中心だが、触感などの伝達が次の技術テーマだ。指先の細かい作業などは触感が重要であるし、握手やハグの感覚があれば遠隔のコミュニケーションとしても大きい進歩だ。いずれは遠距離恋愛のカップルのキスもアバターロボットを介するような時代が来るかもしれない。

[日経MJ2021年7月23日付]

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