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日本のIPOの問題点

SmartTimes セントリス・コーポレートアドバイザリー代表取締役 谷間真氏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Smart Times

6月に成長戦略会議が策定した成長戦略実行計画が閣議決定された。同会議では日本の経済成長が鈍化しているのは日本にGAFAのような巨大企業が新たに誕生してこないことに原因があると指摘している。

日本でユニコーンが生まれにくいのは1995年以降ITサービスが世界経済の中心となったが、この分野でグローバル展開して成功した日本企業がほぼ存在しないことに要因がある。

日本ではいきなりグローバルサービスを展開するスタートアップは極めて少なく、国内で成功したサービスの次の展開として、グローバル展開を検討する。逆に国内を対象市場としているスタートアップをユニコーンと評価することは明らかに過大評価だ。

しかしながら、この問題への対策としてIPOにおける価格設定プロセスの見直し、SPAC(特別買収目的会社)制度の検討を柱とした実行計画は明らかに的を外している。本質は日本企業がグローバルな競争に打ち勝つという期待により評価を上げていくことしかないはずだ。無理に新陳代謝を起こす必要はなく、大企業がアグレッシブな経営を行うように促す施策も検討すべきだ。

さらに実行計画をみると、IPOにおける価格設定プロセスの見直しでは日本では諸外国と比較して初値が公募価格より大幅に上回っていることにより、スタートアップがIPOで十分な資金調達ができていない点を問題視している。

実行計画にも触れられているように、新規上場株が証券会社の優良顧客である個人投資家を中心に割り当てられ、確実に利益が出るように需要が供給を上回る公募価格の設定をする傾向にあることは否めない。

しかし、資金調達できない本当の理由は資金使途の説明義務にある。IPO時には資金使途を反映させた実質2年の中期経営計画の審査を受けなければならない。業績を向上させながらIPOで調達した資金を2年間で使う計画立案は至難の業だ。その結果、IPOはVCやオーナーなどの既存株主の売り出しによるキャピタルゲイン獲得の場となっているのが実状だ。

また、SPACについても上場企業が未上場企業をM&Aすることが認められている以上、制度的には否定すべきものではないと思う。しかしながら、私が手掛けるIPOは経営者が育成してきた企業をより発展させるためにするものであり、SPACや上場企業へのエグジットとは本質的に異なる。経営陣の資質・能力に大きく左右されるスタートアップのリスクをSPAC制度により経営者ではなく一般投資家を中心に負担させる方法が効果的に機能するのか甚だ疑問だ。

成長戦略実行計画は私の専門分野であるIPOに限ると的を外していると感じる。今後実行に移される段階で実務サイドとの十分な検討を期待する。

[日経産業新聞2021年7月21日付]

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