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一杯の食事で命を救う

SmartTimes 公益資本主義推進協議会副会長 田中勇一氏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Smart Times

「自分たちがつらい状況の時だからこそ同じようにしんどい境遇の人を応援する気持ちを忘れたくないんです」と語り、コロナ禍で厳しい飲食店を経営しつつ、寄付を募り、路上生活者や児童養護施設退所者へ弁当などを無料配布するのはフォーシックス(大阪市北区)社長の柳川誉之さん。

1992年住友銀行(現三井住友銀行)入社。新銀行東京とイオン銀行設立に参画後、キャリア支援のリソウルを設立。2010年に社会起業大学を設立。公益資本主義推進協議会副会長。

社名には「スタッフ、取引先、顧客、地域、株主、社会の6つへ貢献し、全ての方の居場所となり、自殺者のいない世界を創る」という想いを込めた。そのきっかけは大阪で事業を大きく展開していた三番目の兄の自殺。六男である柳川さんは貧しい環境にあった家族に尽くした兄の死を深く悲しみ、このようなことは絶対にあってはならないとの思いからだ。

その後、柳川さんは兄の事業の一部であるカフェを引き継ぎ、一時は軌道にのるものの、生前の兄の連帯保証の問題などで厳しい状況になる。その後、アパレルやIT関連業を経て苦境を脱し東京進出を果たす。

障害者雇用や社会貢献への想いが強まった40歳の時に、海鮮居酒屋の店舗マネージャー就任依頼があり、帰阪を決意。その後、不採算店の再建を請け負うが、本部の意向で閉店が決まる。しかし、柳川さんはそこで働く若いスタッフたちの居場所を守るために経営を引き継ぐことを決意し、株式会社フォーシックスを立ち上げる。

そして、45歳の時、神社のような地域の人の居場所を目指すべく、公益資本主義推進協議会のメンバーを中心とする有志から提灯協賛というかたちで支援を募り、「てつたろう梅田中崎町店」をオープン。近隣会社員が早く安く贅沢に昼食の時間を過ごせるよう"天丼ランチ天ぷらのせ放題"を考案、人気を集めている。

柳川さんが地域の人の居場所づくりにこだわるのは、幼少期に共働きの親の帰りが遅くお腹を空かせた自分にこっそりと食べ物をくれた近所の中華屋の大将など、自分を育ててくれた地域の人々への感謝、そして、お互い助け合うことの尊さを知っているからである。

コロナ禍になり経営は厳しくなるものの、応援してくれる人も多い。人の優しさを改めて知った柳川さんはもっと苦しい人の力になろうと路上生活者へ弁当や食事の配布を始める。さらに、飲食店への応援と社会課題解決が同時にできる「イーデリ(EAT&DELIVER)」事業を実験的に立ち上げた。

イーデリでは、3千円・5千円・1万円の中から毎月支払う金額を決め、その金額内で翌月に店内飲食が利用できるサブスクリプションサービスを始めた。さらに、未使用分は翌々月に弁当や食料に置き換わり、支援が必要な人に届けられる。一人でも多くの命を救うために創造的かつ精力的な活動を続ける柳川さんの今後の更なる活躍に期待したい。

[日経産業新聞2021年6月30日付]

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