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CO2回収・再利用、誰が担う 石油資源開発など実証検討

Earth新潮流

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Earth新潮流

温暖化ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンゼロ」は技術革新の積み重ねがなければ実現できない。二酸化炭素(CO2)を回収し、貯留・再利用する「CCUS」もその1つだ。再生可能エネルギーを最大限伸ばしても、発電や工場などにどうしても残るCO2を物理的に回収する必要があるからだ。日本では誰がその担い手となるのか。

脱炭素時代の主導権

三菱ガス化学石油資源開発は新潟県でCO2を有効利用する検討を始めた。三菱ガス化学の新潟工場(新潟市)から出るCO2を回収し、(1)化学物質であるメタノールの製造に利用(2)両社が共同操業する東新潟ガス田(新潟市)に圧入し、原油や天然ガスの増産(EOR)に利用――するための課題を検討する。

メタノール製造に使う水素は、東新潟ガス田で産出する天然ガスからつくる。石油資源開発の天野正徳常務執行役員は「30年までに技術の実証にこぎつけたい」と語る。

取り組みが重要なのは、CO2の分離・回収から、回収したCO2の輸送、工業原料への再利用、地中への圧入・貯留の一連のサイクルを確立するCCUSの技術要素がすべて入るからだ。

国際エネルギー機関(IEA)は5月、50年に温暖化ガス排出の実質ゼロを実現するための工程表を発表した。400項目に及ぶシナリオは、76億トンのCO2をCCUSで回収する必要があると指摘する。

CCUSの技術や経済性はまだ商用化の途上にある。IEAも「CCUSがどこまで活用できるかは不透明要因の1つ」だとくぎをさす。言い換えればその技術をいちはやく手にした国や企業が、脱炭素時代の主導権を握ることを意味する。

国内でのCO2の回収・貯留(CCS)の実績では、北海道・苫小牧沖での実証プロジェクトが最大だ。16年から約3年半で、海底下1000メートル超の深さに30万トンのCO2を圧入した。

実証事業の実施にあたる日本CCS調査(東京・千代田)には34社が参加する。石油資源開発はその筆頭株主だ。天野常務執行役員は「社内には苫小牧のプロジェクトに関わってきた50人以上の人材がいる。地下構造の評価やCO2の圧入、圧入後のモニタリング、地元との調整など蓄積した経験を他でも生かしていく」と語る。

まずは国内で操業する既存の油田やガス田周辺で、貯蔵能力がどの程度あるかを調べる。

INPEXは独自技術

INPEXと石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、南阿賀鉱場(新潟県阿賀野市)でEORの共同研究に着手した。南阿賀鉱場は1964年に生産を開始した鉱区だが、すでに生産を終えている。INPEXは22年をめどにCO2を送り込む坑井2本を新たに掘り、地下に残る原油の回収効果を確かめる。

ここで試すのが独自開発の「CO2フォーム技術」だ。圧入するCO2を水と混ぜて泡状にし、地層にまんべんなく広がるようにして、押し出す原油の回収効率を高めることが期待されている。

CCUSは水素やアンモニア燃料の利用拡大に欠かせない。これらは燃焼させてもCO2を出さない脱炭素燃料として期待が高い。しかし、太陽光や風力など再生可能エネルギーからつくる「グリーン水素」や、石炭や天然ガスから取り出す「ブルー水素」のいずれも国内で需要を満たすことは難しい。

英調査会社ウッドマッケンジーによれば、50年に国内で必要となる水素1650万トンのうち、8割は輸入する必要がある。足元ではブルー水素のほうが、グリーン水素よりもコストが安い。まずは原油や天然ガスを産出地で水素とCO2に分離し、水素を液化したり、アンモニアに変えたりして日本に運ぶサプライチェーンが必要になる。

INPEXは豪イクシスLNG生産事業でのCCSを探る(18年撮影)

つまり、海外での油田・ガス田開発は水素製造とCO2の回収・処理がセットになる。INPEXはオーストラリア北西部で液化天然ガス(LNG)を生産するイクシスプロジェクト周辺でCO2を注入する場所を探している。

加賀野井彰一執行役員は「ブルー水素の生産にはまずCCSの適地確保が必要。イクシスに限らず当社事業のコア地域であるアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビやインドネシアも候補だ」と語る。

その先には、原油や天然ガスの生産段階で生じるCO2と、豪州や中東の広大な土地に敷いた太陽光発電パネルの電力で取り出したグリーン水素を組み合わせ、天然ガスの主成分であるメタンを合成する「メタネーション」も視野に入れる。

コストや土地、課題多く

このメタンを液化してつくる合成LNGは輸送船や受け入れ基地、パイプラインなどの既存インフラがそのまま使える。INPEXは長岡鉱場(新潟県長岡市)で続けるメタネーションの実証プラントの生産能力を50倍に引き上げる計画だ。

CCSに限れば、世界で30件弱のプロジェクトが実用段階にある。その多くがCO2を圧入して原油の生産量を増やすEORとの組み合わせか、炭素税が導入されている北欧などの案件だ。

CO2の圧入にかかるコストを原油や天然ガスの増産分で相殺できるか、炭素税を払うよりも地中に埋めるほうが総合的なコストが安くなる場合でないと成り立たないのが実情だからだ。

コスト低減や埋設地の確保などまだ課題は多い。しかし、IEAによれば、過去3年間で30件超の新規計画が動き出した。CCUSの役割が一段と重要性を増す中で、海外勢に伍(ご)していけるプレーヤーが日本にも育たなければカーボンゼロはおぼつかない。

(編集委員 松尾博文)

[日経産業新聞2021年6月25日付]

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