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鋳物工場、集客は型破り 能作本社(富山県高岡市)

おもてなし 魅せどころ

NIKKEI MJ

鋳物メーカーの能作(富山県高岡市)の本社兼工場が地元客を集めている。製造体験のほか、錫(すず)100%の曲がる食器を売るショップやカフェが人気だ。工場でのファッションショーなど製造業としては型破りなイベントで、知名度を上げてきた。

インスタレーションに使う木型は現役で、裏にある工場から職人が取りにくる

北陸新幹線の新高岡駅から車で約15分。企業団地の中に、外壁がエンジ色の奇抜な建物がある。2017年にできた能作の本社兼工場だ。中に入ると、鋳物造りに使う木型を生かしたインスタレーションが目に飛び込んでくる。

約2500個の木型が並ぶ姿は壮観だが、今でも現役だ。裏側は工場につながり、製作時に職人が取りに来る。現在はコロナ下で中止しているが、通常は工場見学が可能だ。鋳物造りの熱や音を体感できる。

16億円を投じて本社兼工場を作った際の売上高は13億円。錫製の食器が東京の百貨店などで人気になり、業績は好調だったが、地元の経済界からは「あんな大きな本社を建てて大丈夫か」との声があがった。

実はこれが同社にとって周到なファン作り戦略でもあった。

1つは雇用面。地元の子供たちに工場を見せ、将来働きたいと思わせる。製造体験はコロナ下でも人数を絞って実施しており、子供は500円で文鎮を作ることができる。旧工場で受け入れた見学者の中には、実際に能作に入社した人もいる。

口コミで情報が広がる30~40代の女性にも照準を合わせた。カフェではスイーツが銀色に光る錫製のプレートに載って出てくる。ショップは数千円から2万円前後の食器類や雑貨など、ギフトに向く商品が並ぶ。地元客がSNS(交流サイト)で発信すると全国に知られる。

3年目となった19年の入館者数は13万人に達し、高岡市内でも有数の観光拠点となった。20年こそコロナの影響で6万人と減ったが、カフェやショップには平日でも一定の人の姿がある。

「能作に来れば楽しいことがある、と思ってほしい」。能作千春専務は最初の2年間、様々なイベントを開いた。工場でのライブや、庭に大量の雪を持ち込んでのかまくら製作会などだ。社内に産業観光課を設け、一時は社員の15%にあたる25人が接客や企画づくりに関わった。

現在も幼稚園での出前型製造体験、カフェでの地元食材を使うフェアなど、地域との関係づくりに手を打つ。オンラインで工場見学会を開く会社も多いが「自社企画では開催しない」(能作専務)。五感で触れてこそ、会社の価値が分かってもらえるとの信念がある。

(富山支局長 国司田拓児)

[日経MJ 観光・インバウンド面 2021年6月13日付]

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