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過熱するクリエーター・エコノミー IT大手、還元策で争奪戦

先読みウェブワールド (藤村厚夫氏)

NIKKEI MJ

3月にこの欄で取り扱った「クリエーター・エコノミー」現象が、その後も注目を集め続けている。それがためか、一部では過熱とも言える問題も生じている。

TikTokもライブストリーミング機能でギフティングと呼ぶ投げ銭機能を導入した=AP

改めてこの現象を簡単に振り返ろう。「クリエーター」とは、プロのライター、音楽アーティストら芸術家らをさすのはもちろんだが、この現象ではSNSなどで人気の高い(フォロワーの多い)投稿者などを含む。例えば「ユーチューバー」や「ティックトッカー」「インスタグラマー」といった人気SNS上で活躍する影響力ある投稿者だ。こうしたクリエーターのモチベーションを喚起するのに欠かせないのが、「お金」ということになってきた。

人気ユーチューバーが、動画の投稿の見返りに巨額の広告収入の分配を得るという図式はよく知られたことだが、クリエーター・エコノミーにいま注目が集まっている背景には、ここに激しい競争が生じていることがある。大手SNSが人気クリエーターを引き込もうと、彼らの収入やモチベーションが高まるような施策にいっせいに取り組みを始めている。

最近、米新興メディアのアクシオスが整理した記事によれば大手サービスのことごとくが、「投げ銭」「寄付金(クラウドファンド)」「広告収入」「購読料」、そして「クリエーター仲介」といったクリエーターへの還元策をうたうようになっている。記事は「大手IT企業は、いまでは皆クリエーター・エコノミー企業となってしまった」と指摘するほどだ。

特に激戦区はショートムービー分野だ。ティックトックが先行し、ユーチューブ、フェイスブック(インスタグラム)らがショートムービー投稿機能を追加して、これを追う展開だ。利用者の取り合いはもちろんだが、競争の核心はむしろクリエーターの争奪戦にある。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

動画分野だけのことではない。ツイッターでも、一部の人気の投稿者に「ティップジャー」(利用者が投稿者に直接送金できる投げ銭機能)の提供を開始した。同社では手数料は徴収せず、全額が投稿者のフトロコに入るようにした。これもクリエーターにその気になってもらうための優遇姿勢の表れだ。

「投げ銭」と聞いて少額を想像するのは間違いだ。この分野で先行するユーチューブライブが、数年前から「スーパーチャット」(「スパチャ」と呼ばれる)機能を提供するが、韓国プレイボードの調べによると、1年間で1億円以上を受け取った日本人クリエーターもいる。スパチャ以外にも月収1000万超えプレーヤーが存在するプラットフォームは複数あるようだ。

こんな状況になってくると、「過熱化」も心配になる。海外では、刺激的なライブで人気を得ようと犯罪や危険な行為の「ライブ中継」に走ったりする過激化が報告されている。そもそも青少年に多額の投げ銭をさせてしまうことにも、一抹の懸念がある。

クリエーターに現金で直接的に報いるトレンドは悪いことではない。しかし、商売下手なジャーナリストや専門家が良質な情報を提供することを動機づけられるような、スマートな報酬手法の開発にも期待したい。

[日経MJ2021年5月31日付]

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