夫反対も主婦→起業 壁があっても、挫折ととらえず
関西経済同友会代表幹事 生駒京子さん(折れないキャリア)
5月、関西経済同友会の代表幹事に就任した。女性の就任は寺田千代乃氏(アートコーポレーション名誉会長)以来約20年ぶり。自身を「必殺仕事人で遊び人」と称し「これまでの人生で挫折を感じたことはない」と言い切る。

大学卒業後、エンジニアとして10年超働いた。男女雇用機会均等法もない時代からだ。出向先では男性より30分早く出社し、灰皿の掃除をするのが決まりだった。理不尽ですね、と水を向けると「たばこの吸い方でその人の癖が分かる。フロア全体を把握できる有意義な時間だった」。超ポジティブ思考なのだ。
主婦として過ごしていた頃、バブル崩壊に直面。企業の倒産など暗いニュースがあふれる中「私でも何か役に立てるのでは」と、企業の研究開発(R&D)支援で起業を思い立った。
だが夫の反対に遭う。めげずに話を持ちかけると「好きにせい」と机を強くたたかれた。憤る夫の手をつかみ「ありがとうございます、好きにさせていただきます」と返した。1994年に制御機器などを開発するプロアシスト(大阪市)を設立。その後5年間、夫に仕事の話はしなかった。
クレームへの謝罪時も手ぶらで帰らず
起業後、まず手がけたのは、大学の研究室などからホームページ作成を請け負う事業だ。価格は当時でも割安な1ページあたり1万円。客は順調に増えた。するとある日「価格破壊をするな」と大手広告代理店からクレームの電話が。翌朝すぐに謝罪に出向いた。だが手ぶらでは帰らない。「相場は知っていたが請負事業がなければ会社は回らない。仕事をくれないか」。クレームをつけてきた相手に交渉。広告代理店も顧客にし、ネットビジネスを伸ばしていった。
本業のR&Dのアウトソーシング事業でも粘り強く顧客を増やし、会社を軌道に乗せた。今は夫も社員として会社を支える。
ポジティブ思考の持ち主でも、代表幹事のオファーにはプレッシャーを感じたという。「役目が果たせるのか」。先輩経営者らに相談すると「これを逃す経営者がいるか」とエールを送られ、受ける決意をした。
新型コロナウイルス禍の中、代表幹事に求められる役割は重い。だがこれまでの人生、壁を転機に変えてきた。「任せてもらったからには任期の2年間を楽しみたい」。そう前を向く。
(聞き手は丸山景子)
[日本経済新聞朝刊2021年5月31日付]
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